Vinyl Record Reviews
Saultは、ロンドンを拠点に活動するコレクティヴだ。中心人物はプロデューサー兼マルチ奏者のInfloことDean Josiah Coverで、ボーカルのCleo Solが深く関わっている。クレジット上ではほぼ匿名性を保ちながら、R&B、ゴスペル、ハウス、ディスコ、ポストパンク・ファンクなどを行き来する作品を発表してきた。
活動は2019年2月、自身のレーベルForever Living Originalsから「We Are the Sun」を出したところから始まった。同年にはデビュー作『5』と『7』を立て続けに発表している。The Guardianのアレクシス・ペトリディスがこの2作をまとめて高く評価し、どちらにも5つ星を付けたことでも注目を集めた。
InfloはSaultの外でも動いていて、Michael KiwanukaやLittle Simzの作品を手がけている。両者はSaultでも協力者として名前が挙がっている。
2020年6月19日、ジューンティーンスに発表された『Untitled (Black Is)』は、黒人が「自分たちの命のために闘っている」さなかに作ったという声明とともに、ジョージ・フロイドの死や警察の暴力に触れた作品だ。無料ダウンロードで出され、その後の売上は慈善団体に寄付されている。NPRとBBC 6 Musicは2020年の年間ベスト・アルバムの1位に選び、Chicago Readerは「2020年の革命のサウンドトラック」と呼んだ。
その13週間後には、同じテーマを引き継ぐ『Untitled (Rise)』を発表している。こちらは2021年のマーキュリー賞にノミネートされた。
Saultは作品の出し方でもかなり特殊だ。2021年6月の『Nine』は配信とダウンロードで99日間だけ公開され、その後取り下げられた。The ObserverのKitty Empireはこれを「怒りと癒やしのマスタークラス」と評している。
2022年4月には、Pitchforkが「豊かな現代クラシックへの鋭い方向転換」と呼んだオーケストラ作品『Air』を発表し、同年11月には『11』『AIIR』『Earth』『Today & Tomorrow』『Untitled (God)』の5作、計56曲を、5日間だけ無料ダウンロードできる形でまとめて公開した。Varietyはこれを「比較的大物のアーティストが一度に出した新録音として最大の量」と記している。『11』は2023年のアイヴァー・ノヴェロ賞で最優秀アルバムを受賞した。
2023年12月14日、ロンドンで初のライヴを行った。ここでは次作『Acts of Faith』の曲が演奏され、高い評価を受けている。2024年に予定されていた7都市での公演は実現しなかった。
『Acts of Faith』は2024年7月に1本の連続したWAVファイルとして無料公開され、同年12月25日に配信、2025年4月にアナログ盤が発売された。2025年8月にはロンドンのヴィクトリア・パークで開かれたAll Points Eastのヘッドライナーを務め、Cleo Sol、Chronixx、ヤシーン・ベイを迎えて5時間のステージを行ったが、評価は分かれた。2026年1月には、予告なしにジャム&ルイスらが参加した『Chapter 1』を発表している。
Kid Sister、Chronixx、Jack Peñateなどが協力者として知られている。2023年末までは、ライヴ、インタビュー、ミュージック・ビデオが一切なかった。