Vinyl Record Reviews
Stone Harbourは、米国オハイオ州カントンで活動したRic BallasとDave McCartyによるデュオだ。1974年に自主制作盤として唯一のアルバム『Emerges』を発表している。後年、この作品はサイケデリック・ロックのプライヴェート・プレス盤としてコレクターの間で知られるようになった。
結成のきっかけは、McCartyが地元のレコード店に出したドラマー募集の貼り紙だった。これを見たBallasが連絡を取り、ジャム・セッションを通して活動を始めた。BallasはThe Beatlesに触発され、地元オハイオのJames Gang、Glass Harp、Grand Funk Railroad、Alice Cooperのライヴから影響を受けたほか、Deep Purple、Uriah Heep、Humble Pie、Yes、Genesis、Jethro Tullといったバンドの公演にも関心を持っていた。
『Emerges』の録音は、Ballasの両親の家の地下室で行われた。最初はマイク1本とオープンリールのテープレコーダーで録音し、その後4トラック・レコーダーでオーヴァーダビングを重ねている。ミックスはヤングスタウンのスタジオで行われ、そこでリヴァーブが加えられた。
演奏面では、Ballasがエレクトリック、アコースティック、スライドの各ギター、ベース、オルガン、ピアノ、シンセサイザーを担当し、McCartyがリード・ヴォーカルとドラムを担当した。作詞作曲、編曲、プロデュース、エンジニアリングまで2人だけで手がけ、自前のレーベルから安価なプレスで発表している。
『Emerges』には、夢見心地のメランコリックな曲、ファズの効いたヘヴィなサイケデリック・ロック、ルーナー・フォーク調のバラード、初期シンセサイザーを使ったフリークアウトが収められている。ローファイな質感を持つ「地下室サイケ」として扱われることが多い。
デュオ編成でありながら、ギター、オルガン、ピアノ、シンセサイザーまで使い分けている点が目立つ。録音環境も含めて、当時の大型スタジオ作品とは違う作り方がそのまま音に出ている。
メンバーが離れていく中でStone Harbourは自然消滅した。McCartyは土地を離れて音楽活動から身を引いた。一方でBallasはその後40年にわたりキーボード奏者として活動を続け、Pink Floydのトリビュート・バンドで演奏したり、シンガーEric Brookeとの共同作業も行っている。
『Emerges』は45年以上にわたってコレクターに愛され続け、2021年にはスペインのGuerssen傘下のOut-Sider Musicからリマスター盤とライナーノーツ付きで再発された。