Vinyl Record Reviews
The Fifth Dimension(The 5th Dimension)は、1960年代半ばに結成された米国のポップ/ソウル・ヴォーカル・グループだ。もともとはザ・ヴァーサタイルズ(The Versatiles)として活動を始め、後にSoul City Recordsを主宰するシンガーのジョニー・リヴァースに見出されてグループ名を改めた。メンバーにはBilly Davis Jr.、Marilyn McCoo、Florence LaRue、Ron Townson、Lamonte McLemoreが名を連ね、男女混成のヴォーカル・ハーモニーを軸にしたスタイルで広く知られるようになる。
代表曲「Up-Up And Away」は1967年から1968年にかけて世界的なヒットとなり、500万枚以上を売り上げた。アルバムも同期間に100万枚以上のセールスを記録している。制作面ではプロデューサーのBones Howe、そしてロサンゼルスのスタジオ・ミュージシャン集団The Wrecking Crewとの組み合わせがある。ゴスペル、ジャズ、オペラ、ソウルを混ぜたようなコーラス・ワークと、オーケストレーションを前面に出したアレンジが、この時期のThe Fifth Dimensionの音を作っている。
1968年には、グラミー賞で5部門を獲得している。「Up-Up and Away」は年間最優秀楽曲を受賞し、グループとしても最優秀ヴォーカル・グループ、最優秀コンテンポラリー・アルバム、アルバム・オブ・ザ・イヤー、最優秀コンテンポラリー・グループを受賞した。1作品を軸に、グループ全体の評価が一気に高まった時期だった。
1968年以降は、当時まだ一般的な知名度が高くなかったローラ・ニーロの楽曲を積極的に取り上げた。「Stoned Soul Picnic」「Sweet Blindness」「Wedding Bell Blues」「Save the Country」などが続けてヒットしている。特に「Wedding Bell Blues」は全米1位を記録した。
この選曲は、ポップスのヒット曲を歌うグループというだけでなく、ソングライターの個性が強い楽曲を自分たちのコーラスで成立させる役割も持っていた。The Fifth Dimensionのレパートリーには、当時のポップとソウルの接点がそのまま息づいている。
1969年には、ブロードウェイ・ミュージカル『ヘアー』の楽曲をつなげた「Aquarius/Let the Sunshine In」が全米チャートで6週連続1位を記録した。この曲でも、コーラスのまとまりと、メロディを大きく聴かせる構成が前面に出ている。
1970年には、バート・バカラックとハル・デイヴィッドの「One Less Bell to Answer」をMarilyn McCooのリードで全米2位に送り込んだ。ここでは、ソウル・グループとしての表現力と、バラードを丁寧に聴かせるポップ感覚の両方が分かりやすい。
1970年代半ばまで、Bell Recordsなどでヒットを重ねたあと、1975年にはMarilyn McCooとBilly Davis Jr.が独立してデュオとして活動し、「You Don’t Have to Be a Star」で全米1位を獲得している。グループ本体はメンバーを変えながら活動を続け、レーベルもSoul City、Liberty、Bell Records、ABC Records、Motownへと移っていった。
2002年にはVocal Group Hall of Fame入りを果たしている。長期間にわたって編成を変えながらも、ハーモニーを軸にした音楽性を保ってきた点が評価された形だ。
The Fifth Dimensionは、ブラック・ミュージックの歌唱スタイルを、当時のポップスやサイケデリック・カルチャーの文脈に接続したグループとして扱われることが多い。サウンド面では、ソウル・グループのフォーマットに、ラジオ向けのポップな構成と豪華なアレンジを合わせている。
1960年代後半のヒット群を見ると、単発の一発屋ではなく、時代ごとの作家性の強い楽曲をグループの形に落とし込んでいたことが分かる。こうした積み重ねが、後年の殿堂入りにもつながっている。