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The Fugsは、1964年にニューヨークで結成されたロック・バンドだ。中心になったのは、詩人で書店主のエド・サンダースと、ビート詩人のトゥリ・カッパーバーグで、最初期のドラマーとしてケン・ウィーヴァーが参加した。のちにピーター・スタンフェルとスティーヴ・ウェバーも加わり、ローワー・イースト・サイドの空気をそのまま持ち込むような形で活動を広げていった。
バンド名は、ノーマン・メイラーの小説『裸者と死者』に出てくる、“fuck”の婉曲表現から取られている。メイラーの著作『夜の軍隊』では、1967年のペンタゴン反戦行進に参加した彼らの様子も描かれている。
The Fugsは、結成当初からベトナム戦争への反対運動と強く結びついていた。1965年にはESP-Diskと契約し、性、薬物、政治をそのまま歌詞に持ち込んだ楽曲で注目を集めた。演奏は素朴で、録音もラフなものが多いが、そのぶん当時の空気が直接伝わる。
ライブ活動では、全米の反戦デモや集会に参加していた。1967年のペンタゴン反戦行進では演奏も行っていて、音楽と政治運動がかなり近いところで動いていたバンドだ。
音楽性は、ロックを土台にしながら、サイケデリック・ロック、フォーク・ロック、ガレージ・ロック、コメディ、パンクの要素が混ざっている。曲によっては、話し言葉に近い歌い方や、風刺を前面に出した構成もある。
代表曲のひとつには、アメリカの詩をもとにした楽曲がある。たとえば、トマス・グレイの詩を扱った曲や、他の詩作品をもとにした曲も知られている。文学作品をロックに取り込む姿勢は、The Fugsの重要な特徴になっている。
1968年のアルバム『It Crawled Into My Hand, Honest』は、ヨーロッパでもThe Fugsの存在を広げるきっかけになった作品として扱われている。露骨な歌詞や政治色の強さは、受け取り方がかなり分かれたようだが、その反応の大きさ自体がバンドの特徴でもある。
商業的な整い方よりも、発言内容や演奏の勢いを優先したバンドとして見られることが多い。そうした面は、後年になってパンク・ロックの前史として語られることがある。
1969年には、ハーシーパーク・アリーナでグレイトフル・デッドと共演し、これが60年代の最後の大きな区切りになった。その後、1984年に再結成し、ニューヨークのBottom Lineで複数回公演を行っている。2004年にも再び活動を再開し、シカゴでの公演ではジョシュ・リーバーマンがグラス・ハーモニカで参加した。
メンバーは時期によって入れ替わりがあり、Kramer、Ed Sanders、Peter Stampfel、Scott Petito、Tuli Kupferberg、Steve Weber、Steven Taylor、Coby Batty、John Anderson、Ken Weaver、Vinny Leary、Lee Crabtree などの名前が挙がっている。
The Fugsは、演奏の完成度だけで評価するタイプのバンドではない。歌詞の内容、当時の政治運動との距離感、ロックに詩や風刺を持ち込んだやり方に注目すると、輪郭が見えやすい。
60年代のアメリカン・ロックの中でも、かなり特殊な立ち位置にいるバンドだ。反戦運動、文学、ガレージ感覚、パンクの先取りみたいな要素が同時に入っているので、そのあたりを追いながら聴くと面白い。