The Fugs - Golden Filth (1970)
The Fugs『Golden Filth』レビュー
1970年にUSのReprise Recordsから出たThe Fugsのライブ盤が『Golden Filth』だ。録音は1968年6月1日、ニューヨークのフィルモア・イーストで行われたもので、発売時点ではすでにバンドは解散していた。The Fugsは1960年代のニューヨーク・アンダーグラウンドを代表するグループのひとつで、風刺、政治性、猥雑さ、即興性をそのままロックの形に押し込んだ存在として知られる。『Golden Filth』は、その活動の終盤を切り取った記録であり、同時に初期フグスの混沌が、ライブ会場の熱気の中で比較的整理された形で残された作品でもある。
録音時の編成と、ライブ盤としての性格
この作品の収録時の編成はかなり大きく、10人規模のアンサンブルだった。ドラムが2人いるほか、サックス、チューバ、フレンチホルンまで加わっている。エド・サンダースは後年、これらのテープを1969年にApostolic Studioでミックスし、選曲や並び順も含めて組み直したと回想している。単なる会場録音の垂れ流しではなく、編集を通してライブの勢いを作品として整えた作りだ。
実際に聴くと、初期のフグスにある荒っぽさは残しつつも、演奏の輪郭は思った以上にくっきりしている。音の厚みが出る場面では、ギター、リズム隊、管楽器がぶつかり合い、曲の輪郭が前に出る。口上や寸劇めいた部分も含まれているが、ライブの空気をそのまま閉じ込めたというより、ステージで起きていた騒ぎを1枚に収める意識が強い。
収録曲とバンドの持ち味
The Fugsの持ち味は、ロック、フォーク、ガレージ、サイケデリック、コメディが同じ場所に並ぶところにある。『Golden Filth』でもその性格ははっきりしていて、政治的な言葉、性を露骨に扱う歌詞、ユーモア、反体制の態度が、演奏そのものと切り離されずに出てくる。代表曲群をライブ用に組み替えたような構成で、スタジオ盤とは違う角度から曲の輪郭が見えるのが面白い。
バンドの中でも、エド・サンダースとトゥーリ・カプファーバーグの存在感は大きい。The Fugsの名前自体が、ノーマン・メイラーの小説『The Naked and the Dead』に出てくる婉曲表現から取られたもので、そうした言葉遊びの感覚は、この時期の作品にもそのままつながっている。政治的な主張だけでなく、言葉の選び方そのものが作品の一部になっている点が重要だ。
1960年代アンダーグラウンドの記録
1968年という録音年を考えると、このライブはベトナム反戦の時代性と強く結びついている。The Fugsは全米各地の抗議行動で演奏したバンドで、反戦デモやカウンターカルチャーの現場と近い場所にいた。『Golden Filth』は、その空気をスタジオ作品よりも直接的に伝える。Grateful DeadやFunkadelic的な大編成のサイケデリック・ライブとも、MC5やThe Stoogesのような後のハードな衝動とも少し違い、もっと言葉が前に出る。ロックバンドでありながら、詩と演説と茶化しが同じ比重で鳴っている点にThe Fugsらしさがある。
後年のレビューでは、初期の粗い録音よりもバンドとして締まって聴こえる、という見方がある。これはこの作品の実感に近い。雑多な要素が多いのに、ライブの推進力で曲が流れていく。資料盤としての価値だけでなく、The Fugsが単なる過激な言葉の集団ではなく、実際に演奏で場を動かすバンドだったことを示す記録でもある。
作品の位置づけ
『Golden Filth』は、The Fugsの1960年代を締めくくる一枚として見られることが多い。1969年には「最後のコンサート」とされた公演もあり、1970年発売のこのアルバムは、解散後に届いた遺産のような位置にある。のちの再結成や再評価を前提にすると、ここには初期フグスの過激さと、ライブ・バンドとしてのまとまりが同時に残っている。アンダーグラウンド・ロック、プロテスト・ソング、ユーモアの混線。その交点を、1968年のフィルモア・イーストで切り取った作品だ。
RepriseからのUS盤として出た初出盤は、70年当時の文脈をそのまま背負っている。The Fugsの作品群の中では、スタジオで組み立てた実験性よりも、現場の熱と編集の手つきが前に出る一枚。バンドの輪郭を知るうえで、かなり重要なライブ記録になっている。
トラックリスト
- A1 Slum Goddess
- A2 CCD
- A3 How Sweet I Roamed
- A4 I Couldn't Get High
- A5 Saran Wrap
- B1 I Want To Know
- B2 Homeade
- B3 Nothing
- B4 Supergirl