Vinyl Record Reviews
Wisse Scheper(ウィッセ・スヘーパー)は、1970年代初頭のオランダで活動したシンガー・ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト、作曲家だ。活動の細かな記録は多く残っていないが、1972年のアルバム『Topaz』で知られている。コレクターやプログレ系のリスナーのあいだでは、オランダ産のアート・ロック/プログレッシヴ・ポップの隠れた作品として扱われている。
『Topaz』はCBSから発売されたアルバムで、Scheperが全曲の作曲とリード・ボーカルを担当している。演奏面でも、ピアノ、オルガン、シンセサイザー、ヴィブラフォン、チェレスタ、アコースティック・ギターを自らこなしている。ソングライターとしてだけでなく、音色の組み立てまで含めて作品を作っている点が、このアルバムの特徴になっている。
バックを務めたのはTopazというバンドで、Jan Prinsがフルートとアルト・フルート、Hans Roelofsenがギターとコントラバス、Otto Faulhaberがギター、George Snijderがドラムスを担当した。プロデュースはオランダのジャズ・フルート奏者Chris Hinzeが手がけている。
『Topaz』の収録曲は「Rainbow」「Goldilocks」「Woman」「Who Are You」など10曲で、どれも2〜4分台に収まっている。曲数や尺だけを見るとコンパクトだが、内容は単純なポップソング集には寄っていない。ポップなシンガー・ソングライター作品を土台にしつつ、ジャズ・フュージョンの感覚を持つHinzeの関与もあって、楽器の鳴り方や曲の展開に細かい工夫が入っている。
フルートやオルガン、シンセサイザーの使い方が目立ち、歌ものとしてのまとまりを保ちながら、インストゥルメンタル・パートもきちんと置かれている。70年代初頭の作品にありがちな、甘いメロディだけで押し切る作り方にはなっていない。曲ごとに短い中で変化をつける構成が、このアルバムの印象を決めている。
音楽的な位置づけとしては、ポップ寄りのPeter Hammillと、『Hunky Dory』期のDavid Bowieのあいだに置かれることがある。ここでの比較は、歌ものとしての親しみやすさと、少しひねったアレンジや構成の両方を含んだものとして受け取るとわかりやすい。実際、『Topaz』はメロディを前に出しつつ、アート・ロックやプログレッシヴ・ポップの要素を混ぜた作りになっている。
近年はプログレやサイケデリック系の音楽ブログで、「クールでオブスキュアな」隠れた名盤として紹介されることが増えている。大きく知られたアーティストではないが、『Topaz』をきっかけにWisse Scheperの名前が拾い直されている流れはある。記録の少なさも含めて、作品そのものが先に語られているタイプのアーティストだ。
Wisse Scheperを追うなら、まずは『Topaz』を聴くのがいちばん早い。70年代初頭のオランダ産ポップ・ロックの中でも、アレンジの細部まで気を配った作品としてチェックしやすい一枚だ。