Cock Robin - Cock Robin (1985)
Cock Robin『Cock Robin』(1985) レコード紹介
1980年代のポップ・ロック/シンセポップを語るうえで、Cock Robinのデビュー作『Cock Robin』は外せない1枚だ。バンドの核はシンガー/ソングライターのピーター・キングズベリー。彼が結成したこのグループは、アメリカでは大きな商業的成功に直結しなかった一方、ヨーロッパでは強い支持を集めた。その最初の結果として出てきたのが、本作である。1985年にUS Columbiaから出たオリジナル盤で、レーベル表記はC 39582、ジャケット側ではPC 39582の記載も確認できる。
作品の輪郭
本作は、ロサンゼルスの複数スタジオで録音されたアルバムで、プロデュースは元Gongのスティーヴ・ヒレッジが担当している。プログレッシブ・ロックの文脈を持つ人物が、80年代半ばのアメリカン・ポップ・ロックを整理しながら仕上げた、という組み合わせがまず面白い。収録曲はすべてピーター・キングズベリー作。作家性がはっきり前に出たデビュー作で、バンドというより、キングズベリーの曲を軸にしたプロジェクト性も感じる構成だ。
演奏面では、アナ・ラカツィオのボーカルが重要な役割を担う。キングズベリーとの掛け合いは、この時代の男女ツイン・ボーカルものの中でも聴き分けやすい部類で、曲の輪郭を明確にしている。クライヴ・ライトのギター、ルイス・モリノIIIのドラムも含め、音数は多すぎず、シンセとバンド・サウンドの配分が整っているのがこの作品の特徴だ。
代表曲と当時の反応
このアルバムを語るなら、やはりシングル“When Your Heart Is Weak”が中心になる。1985年6月に全米ホット100で35位を記録し、Cock Robinにとってアメリカでの唯一のヒット曲となった。ミュージックビデオがジョシュア・ツリー国立公園で撮影されている点も、80年代中盤の映像作品らしい記憶の残り方をしている。続く“The Promise You Made”はアメリカではチャート入りしなかったが、ヨーロッパでは存在感が強く、ベルギーで1位を獲得するなど各国で上位に入った。
アルバム全体も、アメリカよりヨーロッパで強く受け止められた作品として知られている。全米アルバムチャートでは61位止まりだった一方、オランダ2位、イタリア4位、フランス7位、ドイツ9位を記録。フランスでは2度のゴールド、ドイツとオランダでもゴールド認定を受けている。まさに両岸で運命の違うデビュー作で、Cock Robinの名前をまずヨーロッパで広げたアルバムでもある。
サウンドの印象
実際に聴くと、派手なシンセ・サウンドで押し切るタイプではなく、曲のメロディを前面に置いた作りが目立つ。80年代のUSポップ・ロックに多い分厚いコーラスや、当時の空気を反映したキーボードの質感はあるが、全体の印象はかなり整然としている。フックの強さはあるのに、過剰に盛り上げすぎない。そのため、シングル曲だけでなくアルバム単位でも流れがつかみやすい。
同時代の文脈で見ると、Cock Robinは、Tears for Fearsやa-haのようなヨーロッパ側での強い受容を持つ80年代ポップ勢と並べて語られることが多い。とはいえ、音の作りはもっとアメリカ寄りで、ソングライティングの直線性が前に出る。キングズベリーのメロディ感覚がそのまま作品の骨格になっていて、そこにヒレッジのプロダクションが輪郭を与えている、という見方がしっくりくる。
レコードとしての位置づけ
1985年盤のオリジナルUSプレスは、この作品の初期の姿をそのまま伝えるものだ。CBS Inc.表記の時代で、80年代CBS/Columbiaのアメリカ盤らしい仕様になる。のちの再発とは切り離して考えたい1枚で、当時のレーベル表記やカタログ番号を含めて、1985年という年代感がはっきり出る。Cock Robinにとっては、後の“ヨーロッパで知られたバンド”というイメージの出発点であり、ピーター・キングズベリーの作家性を最初にまとめて提示したアルバムでもある。
デビュー作でありながら、すでにバンドの方向性がかなり固まっている点が面白い。ヒット曲だけでなく、アルバム全体の構成、男女ボーカルの配置、シンセポップとロックのバランス、そのあたりが1985年という年の空気とよく噛み合っている。Cock Robinを初めて追うときの入口としても、この1枚はバンド像をつかみやすい作品だ。
トラックリスト
- A1 Thought You Were On My Side 4:16
- A2 When Your Heart Is Weak 4:37
- A3 Just When You're Having Fun 3:40
- A4 The Promise You Made 3:52
- A5 Because It Keeps On Working 4:34
- B1 Born With Teeth 4:12
- B2 Once We Might Have Known 5:07
- B3 More Than Willing 4:28
- B4 A Little Innocence 5:29