Wetton / Manzanera - Wetton Manzanera (1987)
John Wetton 1987

Wetton / Manzanera - Wetton Manzanera (1987)

Rock Pop Rock

Wetton / Manzanera『Wetton Manzanera』について

『Wetton Manzanera』は、元King Crimson、U.K.、Asiaで知られるジョン・ウェットンと、Roxy Musicのフィル・マンザネラによる共作アルバムで、1987年に登場した作品である。ロック、特にプログレッシブ・ロックやアート・ロックの文脈で語られることが多い二人だが、この盤ではそうした経歴をそのまま前面に出すというより、より整理されたポップ・ロック寄りの形で音をまとめている。

制作は1986年3月から8月にかけて、イングランド・サリーのGallery Studiosで行われたとされる。後年の資料では、マンザネラ側のスタジオでウェットンが未完成曲「It’s Just Love」を仕上げたことがきっかけになり、アルバム全体へ発展したという流れが伝えられている。大物同士の“顔合わせ”というだけでなく、曲作りの段階から共同作業として進んだ作品という点が、このアルバムの輪郭を決めている。

参加メンバーと制作の背景

参加者には、Alan White、Vic Emerson、Kevin Godleyといった実力派が名を連ねる。いずれも70年代から80年代にかけての英国ロック周辺で重要な仕事をしてきた人物で、演奏面の信頼感は高い。とはいえ、作品全体は演奏の技巧を誇示する方向にはあまり振れておらず、各パートがきちんと整理されたスタジオ作としてまとまっている印象が強い。

ジョン・ウェットンにとっては、King CrimsonやU.K.のような緊張感の強いバンド、あるいはAsiaのような大きな成功を収めた活動とは少し異なる位置づけの一枚である。フィル・マンザネラにとっても、Roxy Musicの華やかなイメージとは別に、より落ち着いたソングライティングの側面を見せる場になっている。両者のキャリアを並べて見ると、この盤は“超大物の競演”というより、作家としての持ち味をすり合わせた共作盤として捉えやすい。

音の印象

全体の音作りは、1980年代後半らしい整ったプロダクションが中心で、ギター、ベース、シンセ、コーラスが過度にぶつからないよう配置されている。ウェットンの歌は低域に芯があり、マンザネラのギターは必要以上に前へ出ず、曲の骨格を支える役回りに回る場面が多い。プログレ的な複雑さを期待すると肩透かしに感じるかもしれないが、逆に言えば、旋律とコード進行の流れを追いやすい作りでもある。

レビュー面では、後年のAllMusicなどでAOR寄り、プロダクションが磨かれすぎている、といった辛口の見方がある一方、回顧的にはポップ色の強い聴きやすい作品として受け止める声もある。つまり、当時から“顔ぶれの豪華さに比べて地味”という印象を持たれやすい盤だったようだ。ただ、その地味さは単なる印象不足ではなく、楽曲を前に置く設計の結果とも言える。

同時代の文脈

1987年という時期は、プログレ系の大作主義が前面に出る時代ではなく、洗練されたポップ・ロックやAORの手法が幅を利かせていた頃である。この作品も、その空気を強く反映している。King Crimson系の緊張感、Roxy Music系のアート感覚、Asia以降のメロディ志向が、派手に混ざり合うというより、比較的落ち着いた形で接続されているのが特徴だろう。

同じように、キャリアの異なる要素を持つ英国ロック人脈の作品としては、個人名義のソロ作や一時的なプロジェクト盤と並べて語られることが多い。そうした中で本作は、名義こそ二人の連名だが、内容は比較的統一感があり、共作アルバムとしてのまとまりがある。

日本盤としての位置づけ

今回の盤は日本リリースで、Geffen Recordsの品番P-13486が付いた1987年盤である。オリジナル年と同年のリリースなので、後年の再発盤というより、当時の空気をそのまま持った国内盤として考えるのが自然だ。Geffenというレーベル自体も、1980年代の英米ロックを広く扱っていたレーベルで、この時期の作品らしい国際的な流通の中に置かれている。

まとめ

『Wetton Manzanera』は、派手な話題性や大ヒット曲で押すタイプの作品ではない。だが、ジョン・ウェットンとフィル・マンザネラという二人の名前が並ぶこと自体に意味がある盤であり、演奏陣も含めて80年代英国ロックの職人的な側面がよく出ている。プログレの系譜を背負ったミュージシャンが、過剰に構えず、整理されたポップ・ロックの形に落とし込んだ一枚として、静かに残る作品である。

トラックリスト

  1. A1 It's Just Love 3:38
  2. A2 Keep On Loving Yourself 5:12
  3. A3 You Don't Have To Leave My Life 4:24
  4. A4 Suzanne 3:24
  5. A5 Round In Circles 4:32
  6. B1 Do It Again 4:49
  7. B2 Every Trick In The Book 4:06
  8. B3 One World 3:54
  9. B4 I Can't Let You Go 3:22
  10. B5 Have You Seen Her Tonight? 4:47

動画プレイリスト

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