Roy Orbison - In Dreams (1963)
Roy Orbison『In Dreams』
ロイ・オービソン(Roy Orbison)の1963年作『In Dreams』は、モニュメント・レコード(Monument Records)時代の代表作として知られる傑作アルバム。テネシー州ナッシュヴィルの名門RCAビクター・スタジオBで録音され、レーベル主宰者でプロデューサーのフレッド・フォスターと名エンジニアのビル・ポーターのタッグのもとで制作された。タイトル曲「In Dreams」は、夢の中で聴いたメロディをもとに起床後わずか20分ほどで書き上げたという逸話を持つ、オービソンの象徴的な1曲である。
制作背景・エピソード
表題曲「In Dreams」は、一般的なバース・コーラス(A-B-A-B)形式を一切取らず、7つの異なる楽節が次々と展開しながら2オクターブ半に及ぶファルセットの高音へとクレッシェンドしていく通作歌曲の金字塔である。震えるようなバリトンから哀切極まる高音へと跳躍するオービソンの天性のボーカルが、孤独や白日夢の幻想性を圧倒的なリアリティで描き出している。
本作には表題曲のほかにも、ジョー・メルソンと共作した「Blue Bayou」、ジョニー・マーサー作のスタンダード「Dream」、エヴァリー・ブラザーズで知られるブーデロウ・ブライアント作「All I Have To Do Is Dream」、スティーブン・フォスター作「Beautiful Dreamer」など、「夢(Dream)」をモチーフにした名曲群が並び、トータル・アルバムのような一貫した美学を備えている。
バックを支えるのは、ボブ・ムーア(ベース)、フロイド・クレイマー(ピアノ)、ブーツ・ランドルフ(サックス)、アニタ・カー・シンガーズ(コーラス)らナッシュヴィルのトップ・セッション軍団「Aチーム」。ビル・ポーターの手による立体的で透明感のあるステレオ録音も、本作の完成度に大きく寄与している。
時代の文脈
1963年のアメリカのポップ・シーンにおいて、オービソンは洗練されたストリングスと重厚なコーラスを配した「ナッシュヴィル・サウンド」をドラマティックに昇華させ、いわゆる「オペラティック・ロック」という唯一無二の領域を築き上げていた。同年5月には、ブレイク直後のザ・ビートルズと共同ヘッドライナーとして全英ツアーを敢行。イギリス国内でのオービソン人気は凄まじく、ビートルズのメンバーたちとも親交を深め、のちのブリティッシュ・インヴェイジョン期においても全英チャートで圧倒的な支持を保ち続けた数少ないアメリカ人アーティストとなった。
後世への影響
1986年、映画監督のデヴィッド・リンチが映画『ブルー・ベルベット』の象徴的な劇中歌として「In Dreams」を起用(ディーン・ストックウェルによるリップシンクの名場面)。これをきっかけにオービソンは劇的な再評価を受け、1987年の「ロックの殿堂」入り、そして1988年のスーパーグループ「トラベリング・ウィルベリーズ」への参加や名盤『Mystery Girl』での完全復活へと結実した。
また「Blue Bayou」は、1977年にリンダ・ロンシュタットがカバーして全米3位の大ヒットを記録するなど、アメリカン・ポップスの永遠のスタンダードとして定着した。
チャート面では、アルバムは米ビルボードTop LP'sで最高35位(23週チャートイン)にとどまったものの、全英アルバム・チャートでは最高6位、58週に及ぶロングヒットを記録。シングル「In Dreams」は全米7位/全英6位を記録し、「Blue Bayou」も全米29位(B面の「Mean Woman Blues」は全米5位)/全英3位のヒットとなった。
トラックリスト
- A1 In Dreams 2:46
- A2 Lonely Wine 2:52
- A3 Shahdaroba 2:36
- A4 No One Will Ever Know 2:26
- A5 Sunset 2:37
- A6 House Without Windows 2:19
- B1 Dream 2:10
- B2 Blue Bayou 2:29
- B3 (They Call You) Gigolette 2:35
- B4 All I Have To Do Is Dream 2:22
- B5 Beautiful Dreamer 2:17
- B6 My Prayer 2:43