Imarhan - Essam (2026)
Imarhan『Essam』
アルジェリア南部タマンラセットを拠点に活動するトゥアレグ族のデザート・ロック/ティショウマレン(Tishoumaren)バンド、イマルハン(Imarhan)が2026年1月にドイツの名門City Slangから発表した通算4作目のスタジオ・アルバム。タイトルの『Essam』はタマシェク語で「稲妻」を意味し、伝統的な砂漠のブルースに先鋭的なエレクトロニクスが火花を散らす新機軸を打ち出している。
制作背景と革新的サウンド
本作のレコーディングは、バンド自身が地元タマンラセットに構えるコミュニティ空間兼スタジオ「アボージ・スタジオ(Aboogi Studio)」で行われた。親族や地元の仲間たちが集い、熱気あふれる手拍子や合唱を交えた生演奏の一発録音を基本としながら、本作では外部の才能を迎えてかつてない音響実験を敢行している。
共同プロデューサーには、フランスのエレクトロ・ポップ・デュオUTOのエミール・パパンドレオと、長年イマルハンの音響を支えてきたエンジニアのマキシム・コジネツを起用。砂塵を巻き上げるようなエレキギターのリフや伝統弦楽器テハルデンの響きに、モジュラー・シンセサイザーによるアンビエントなドローンやリアルタイム・オーディオ・サンプリングが融合し、催眠的でサイケデリックな音空間が立ち現れる。
主要楽曲と音響の魅力
オープニングの「Ahitmanin」から砂漠の乾いた空気感と重層的なビートが聴き手を引き込み、「Derhan N'Oulhine」や「Azaman Amoutay」の長尺エクステンデッド・バージョンでは、トランス状態へと誘う反復グルーヴと電子音のモジュレーションが見事な調和を見せる。伝統的なコール&レスポンスとミニマルなクラブ・ミュージックの親和性を実証するかのような構成である。
作品の意義
ティナリウェンらが世界に知らしめたトゥアレグ・ギター・ミュージックの系譜を受け継ぎつつ、2020年代半ばの現在進行形の先鋭エレクトロニクスを取り入れることで、イマルハンはデザート・ブルースを未踏の領域へと押し広げた。サハラ砂漠の伝統とグローバルな音響実験が完璧に融合した、新世代アフリカン・ミュージックの指標となる傑作である。
トラックリスト
- A1 Ahitmanin
- A2 Derhan N'Oulhine (Extended Version)
- A3 Telallalt
- A4 Tamiditin
- A5 Azaman Amoutay (Extended Version)
- B1 Tin Arayth
- B2 Tinfoussen
- B3 Adounia Tochal (Extended Version)
- B4 Assagasswar