Hand - Everybody's Own (1972)
Hand『Everybody's Own』について
Handは、1972年にスイス・ローザンヌで結成されたグループで、Marc Osborne、Nick Zoullas、Tony Angierを中心に活動したバンドだ。『Everybody's Own』はその初期の作品として知られるアルバムで、オリジナルは1972年に登場している。のちに2012年盤がGolden Pavilion RecordsからLPで出ており、現在手に取られているのはその再発盤にあたる。レーベルはポルトガルのGolden Pavilion Records、カタログ番号はGP1018LP。左寄りのサイケデリック、ライブラリー、プログレッシブ、実験音楽を扱うレーベルとして知られていて、この作品もそうした文脈の中で再評価されてきた一枚といえる。
音の中心にあるのはフォークだが、単純な弾き語りの延長には収まらない。スイスという地域性を強く前面に出すタイプでもなく、むしろ70年代初頭の欧州アコースティック・ロックの空気をまとった作品として聴こえる。ギターを軸にした曲作りの中に、素朴さと構成の丁寧さが同居していて、派手な展開で押すよりも、曲そのものの輪郭をじっくり見せるタイプのアルバムだ。バンドとしてはこの1枚を残していったん解散しており、そうした意味では初期の手触りがそのまま記録された作品でもある。
アルバム全体の印象
『Everybody's Own』を聴くとまず感じるのは、演奏が過度に飾られていないことだ。アレンジは必要以上に厚くならず、歌とギターの関係がはっきりしている。フォークを基調にしながらも、当時の英国や欧州で見られたシンガー・ソングライター的な書き方、あるいは牧歌的なアコースティック・ロックの感触がある。録音年代を考えると、60年代末のフォーク・ロックの流れを受けつつ、70年代初頭の落ち着いた作法へ移っていく時期の空気も感じやすい。
再発盤という点では、オリジナル盤を追いかけるよりも、こうした作品が長く埋もれずに聴ける形になっていること自体が大きい。Golden Pavilion Recordsは、こうした周縁的な好事家向けの音源を丁寧に扱うレーベルで、Handのようなバンドの初期作を再提示する役割も果たしている。盤としては2012年のLPで、オリジナルの1972年盤から時間を置いての流通になるが、作品そのものは70年代初頭の空気をそのまま持っている。
注目曲として聴きたいポイント
曲ごとの細かなクレジットやヒット曲の情報は多く残っていないが、このアルバムでは、歌メロの運びとアコースティックな手触りが耳を引く。とくに印象に残るのは、派手なフックで押すのではなく、フレーズの反復やコードの流れで曲を前へ進める作りだ。フォーク作品にありがちな単調さへ流れず、演奏の間合いで聴かせる場面が多い。曲間の温度差も大きすぎず、アルバム全体を通してまとまりを保っている。
また、70年代初頭の欧州フォークには、米国のシンガー・ソングライターとは少し違う、内省と素朴さが同居する感じがあるが、この作品もその範囲に入る。強い主張を前に出すより、淡々とした歌の流れの中で情景を見せるタイプで、聴き進めるほどに曲の輪郭が見えてくる。大きな転調や劇的な盛り上がりより、地味な構成の中にある手触りがこの盤の見どころだ。
Handというバンドの位置づけ
Handは、のちに2013年に再結成され、新作をGolden Pavilion Recordsから発表していくことになるが、その出発点にあるのがこの『Everybody's Own』だ。つまりこのアルバムは、単なる初期作というだけでなく、バンドの原点を知るための記録としても重要な位置にある。再結成後の活動があることで、初期作の意味も後追いで見えやすくなった。初期の1枚を挟んで長い空白を経るバンドは少なくないが、Handの場合は、その最初の記録が後年の再始動とつながって見えるところが面白い。
ジャンルの文脈でいえば、Rock、Folk、World, & Countryと整理されている通り、中心はフォークだが、時代の空気を含んだアコースティック・ロックの一枚としても捉えやすい。比較対象を挙げるなら、同時代の欧州フォーク・ロックや、素朴な歌と演奏を軸にしたシンガー・ソングライター作品に近い耳で向き合うと、輪郭がつかみやすい。『Everybody's Own』は、派手な話題性よりも、70年代初頭のスイスでこうした音楽が鳴っていたことを静かに伝える作品だ。
トラックリスト
- A1 The Load 3:20
- A2 Leaves 1:50
- A3 Time Will Chage Your Season 3:50
- A4 Chubby's Song 4:00
- A5 Levy's Lullaby 2:20
- A6 Shifting Lead 2:45
- B1 I Drive 2:55
- B2 Who 2:35
- B3 Dying Ground 3:45
- B4 Seven Sad Sisters 1:50
- B5 Autumn Calling 2:00
- B6 Everybody's Own 4:50
動画
- HAND 1972 everybodys own
- HAND 1972 the load
- HAND Everybody's own Hand SWISS Acid-folk Psych Prog
- Hand - Everybody's Own (Folk Rock, Swiss 1972) [Full album]