Peter Gabriel - Passion (1989)
Peter Gabriel 1989

Peter Gabriel - Passion (1989)

Electronic Rock Folk, World, & Country Stage & Screen Art Rock Folk Soundtrack Tribal

Peter Gabriel『Passion』

Peter Gabrielが1989年に発表した『Passion』は、マーティン・スコセッシ監督の映画『最後の誘惑(The Last Temptation of Christ)』のために書かれた音楽を、独立したアルバムとして組み直した作品である。もともとの映画音楽は、法的な事情からタイトルを変えてリリースされ、Peter Gabrielにとっては初めてReal World Recordsから出たアルバムとなった。1989年6月5日発売、Real Worldの第1弾RW1という位置づけ。

制作背景と録音の経緯

映画『最後の誘惑』の企画は1983年にParamountで始まったが、予算の増大と宗教団体からの抗議で中止となり、その後1986年にUniversalが関心を示して再始動した。UniversalはGabrielの録音期間を10週間から3週間に短縮しており、制作条件はかなり厳しいものだった。映画用の録音は1988年2月から6月頃にかけてReal World Studiosで進められ、映画のミックスを終えたあともGabrielはさらに4か月をかけてアルバムとして仕上げている。

参加したのは、GabrielがWOMADを通じて築いた人脈が大きい。ヌスラト・ファテ・アリ・ハーン、ユッスー・ンドゥール、L.シャンカール、バーバ・マールといった音楽家が加わり、David Rhodes、Manny Elias、Manu Katché、Billy Cobhamらも演奏に関わっている。Gabrielは曲のスケッチをおよそ7分ほどの即興で作ったと語っており、その理由を「7分経つと飽き始めるから」と説明している。さらに、アルメニアのドゥドゥクの旋律やクルドの伝統旋律、伝統音楽の録音も素材として取り入れられた。Gabrielは国立音響アーカイブ(National Sound Archive)で伝統音楽の録音を聴き込み、それらは姉妹盤『Passion – Sources』にまとめられている。Gabrielによれば、Nass El Ghiwaneの「Ya Sah」の原録音は娼館の場面に使われ、スコセッシのサウンドトラックの構想を形づくる助けになったという。

収録曲の注記も細かい。A1には、Ocora RecordsでRobert Ataianの監修のもと録音されたアルメニアの旋律「The Wind Subsides」が使われている。A4はクルディスタンの伝統旋律を含み、A4のクルドのドゥドゥクはUnesco Collectionの録音から採られている。B1は、悪霊を追い払うために演奏されるという伝統的なエジプトのリズムを下敷きにしており、B3はShankarとGabrielによる即興から生まれた。B4にはアルメニアの伝統旋律を吹くネイ・フルートが入り、C2はMahmoudとGabrielの即興を元にしている。映画で使われなかった「Troubled」「Before Night Falls」「Bread And Wine」もアルバムに加えられた。

時代の文脈と作品の位置

『Passion』は、Gabrielのキャリアでは8作目のアルバムであり、2作目のサウンドトラックでもある。Real World Recordsの立ち上げと同時に出た作品でもあり、姉妹盤『Passion – Sources』が第2弾(RW2)となった。映画『最後の誘惑』は公開前後にキリスト教団体の抗議やボイコットを受け、1988年10月にはパリで上映中の映画館が放火される事件も起きている。その一方で、音楽は1988年のゴールデングローブ賞作曲賞にノミネートされた。

ジャケットにはJulian Graterのミクストメディア作品『Drawing study for Self Image II』(1987年)が使われている。

後世への反応と評価

『Passion』は1990年のグラミー賞で最優秀ニューエイジ・アルバムを受賞し、ワールド・ミュージックを広く普及させる上での画期的な作品とみなされている。Billboard 200では60位、全英29位、ドイツ30位を記録し、アメリカではゴールド認定を受けている。批評面では、Rolling StoneのJimmy Gutermanが「心を揺さぶる、驚くべき作品」と評し、Chicago TribuneのChris Heimは「意外なほど聴きやすく、成功したインストゥルメンタル・アルバム」と書いている。一方でCashbox誌は「アフロ/中東のフルーツサラダ」と記している。

Gabriel自身はのちに、この作品を「自分が作った中で最高のものかもしれない」と語っている。『Passion – Sources』に登場した音楽家の多くは、その後『US』『Secret World Live』『UP』にも参加した。

トラックリスト

  1. A1 The Feeling Begins 4:00
  2. A2 Gethsemane 1:25
  3. A3 Of These, Hope 3:52
  4. A4 Lazarus Raised 1:37
  5. A5 Of These, Hope - Reprise 2:42
  6. A6 In Doubt 1:33
  7. A7 A Different Drum 4:40
  8. B1 Zaar 4:52
  9. B2 Troubled 2:53
  10. B3 Open 3:25
  11. B4 Before Night Falls 2:19
  12. B5 With This Love 3:35
  13. C1 Sandstorm 3:00
  14. C2 Stigmata 2:30
  15. C3 Passion 7:36
  16. C4 With This Love - Choir 3:22
  17. D1 Wall Of Breath 2:29
  18. D2 The Promise Of Shadows 2:11
  19. D3 Disturbed 3:43
  20. D4 It Is Accomplished 2:51
  21. D5 Bread And Wine 2:22

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Peter Gabriel

Peter Gabriel

Peter Gabrielは、ロックを軸に、ファンク、ソウル、フォーク、ワールド・ミュージックの要素も取り込んできたアーティストだ。ポップ・ロックやアー...

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