Kanye West - Ye (2018)
Kanye West 2018

Kanye West - Ye (2018)

Hip Hop Funk / Soul Contemporary R&B Pop Rap

Kanye West『Ye』(2018) レコード解説

Kanye Westの8作目のスタジオ・アルバム『Ye』は、2018年6月1日に発表された作品で、同年の“ワイオミング・セッションズ”の流れの中に置かれる1枚だ。全7曲、約24分という短さがまず目を引くが、内容もその尺に合わせてかなり凝縮されている。Def Jam RecordingsからのUS盤で、今回のレコードも2018年リリースのオリジナル期に属する。

この時期のKanyeは、ラッパー、プロデューサーとしての存在感に加えて、発言や振る舞いも含めて強く注目されていた。『Ye』は、その空気をかなり直接的に反映した作品で、私的な感情、家族、自己認識、精神状態といった要素が前面に出ている。タイトルは後に本人の名前としても使われる「Ye」で、作品と人物像が近い距離で重なっている点も特徴的だ。

ワイオミングで作られた短編アルバム

本作はワイオミング州ジャクソンホールのウェストレイク・ランチで制作された。2018年にKanyeが同地で発表した一連の作品群の中では2作目にあたり、Pusha T『Daytona』、Kids See Ghosts『Kids See Ghosts』、Nas『Nasir』、Teyana Taylor『K.T.S.E.』と並ぶ流れの中で聴くと、制作環境や音の整理のしかたが見えやすい。どの作品も比較的短く、密度を上げた構成が共通している。

『Ye』は発売前夜の試聴会を経て世に出た作品でもある。タイトルはクリス・ロックが会場で発表したことで知られ、ジャケットにはティトン山脈の写真と「I hate being Bi-Polar its awesome」という手書きの文字が載せられた。iPhoneで撮影されたこの写真は、飾りを削った即物的な見た目で、アルバムの内省的な方向性とつながっている。

内容は私的、サウンドは骨格重視

収録曲を通して聴くと、ビートや編曲は派手さを抑えたものが多く、声の置き方やサンプルの使い方で曲を引っ張っていく場面が多い。ヒップホップを軸にしながら、ファンクやR&Bの要素が曲の輪郭を作っていて、メロディの扱いもかなり重要だ。全体の長さが短いぶん、1曲ごとの役割がはっきりしている。

冒頭の「I Thought About Killing You」は、話し声に近い語り口から始まり、アルバム全体の不穏さを最初に置く。「Yikes」はその後に続く中では比較的勢いがあり、Billboard Hot 100でも8位を記録した。続く「All Mine」もシングル的な輪郭を持ち、チャートでは11位まで上がっている。こうした曲は、短いアルバムの中でも外向きの強さを持つ部分だ。

一方で、作品の核として語られやすいのは「Ghost Town」だろう。Shirley Ann Lee「Someday」を使った入り方から印象が強く、070 Shakeのパートで曲の空気が大きく変わる。解放感のあるアウトロは、このアルバムの中でも特に記憶に残る部分として扱われることが多い。「Kids See Ghosts」用に録音されていたものが本作へ移されたという経緯もあり、ワイオミング期の作品同士のつながりを感じさせる。

終盤の「Violent Crimes」は、父親としての視点が前に出た曲で、アルバムの締めとしてかなり具体的な感情を残す。家族や子どもに向けた視線は、Kanyeのディスコグラフィーの中でもこの時期ならではの読みどころになっている。

参加者と制作の輪郭

ゲストにはTy Dolla $ign、Kid Cudi、070 Shake、Charlie Wilson、Jeremih、PARTYNEXTDOORらが参加している。どの曲でも客演が前に出すぎず、Kanyeの構成の中に組み込まれている印象が強い。ボーカルの重ね方やコーラスの配置を見ると、ラップ・アルバムというより、歌と断片的なフレーズを使って感情の流れを作る作品としてまとまっている。

レーベルはDef Jam Recordings、US盤としての位置づけも明確だ。ランアウトにはSTERLINGの刻印があり、透明ステッカーにB0028730-02の表記があるなど、盤としての情報も2018年当時のリリースらしい仕様になっている。オリジナル期の盤なので、後年の再発盤と比べるというより、当時の空気をそのまま持つ1枚として見るのが自然だ。

2018年のKanye Westを示す1枚

『Ye』は、Kanye Westの作品群の中でも、外側の騒がしさと内側の告白がかなり近い距離で並んだアルバムだ。Billboard 200では初登場1位を獲得し、これで8作連続の全米1位となった。一方で批評面では評価が割れ、Metacriticでは賛否が分かれる反応になった。短い尺の中に、当時のKanyeの考え方、家族観、自己像、そしてワイオミング期の制作スタイルがまとまっている。

ヒップホップの文脈で見ると、派手なラップの応酬よりも、音数を絞って感情の輪郭を見せる作りが前に出ている。2010年代後半のKanyeを理解するうえで、そして『The Life of Pablo』以降の流れを追ううえで、かなり重要な位置にある作品だ。

トラックリスト

  1. A1 I Thought About Killing You
  2. A2 Yikes
  3. A3 All Mine
  4. B1 Wouldn't Leave
  5. B2 No Mistakes
  6. B3 Ghost Town
  7. B4 Violent Crimes

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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