Drake - Take Care (2011)
Drake『Take Care』──内省とヒット性が同居した2011年の代表作
Drakeの『Take Care』は、2011年に発表された2作目のスタジオ・アルバムで、同年のUS盤としても重要な位置を占める作品だ。カナダ・トロント出身のラッパー/シンガーとして注目を集めていたDrakeが、前作で広げた評価をさらに押し進め、商業面でも批評面でも大きく存在感を示したアルバムである。ヒップホップを軸にしながら、Contemporary R&BやPop Rapの要素を自然に溶かし込み、ラップと歌の境界を軽やかに行き来する作りが全体を貫いている。
トロントの空気をまとった重心の低いサウンド
制作の中心には長年の盟友ノア・“40”・シェビブがいる。2010年から2011年にかけて主にトロントで作られたこのアルバムは、派手な高揚感よりも、低く沈むような音像が印象に残る。アンビエント的な広がりを持つトラック、空間の余白を活かしたビート、細かく置かれるシンセやパーカッション。その積み重ねが、Drakeの淡々とした語り口や、感情を抑えた歌い回しとよく合っている。
参加プロデューサーにはBoi-1da、T-Minus、Jamie xx、Just Blaze、Illangeloらが並ぶ。各曲の輪郭は違っていても、アルバム全体の温度は大きくぶれない。2010年代前半のヒップホップが、より内省的でメロディ重視の方向へ広がっていく流れの中で、『Take Care』はその中心に置かれる作品として扱われてきた。
恋愛、友情、家族、成功の重み
この作品の主題は、恋愛の破綻やすれ違い、身近な人との距離感、そして成功が増すほど難しくなるバランス感覚にある。Drakeは感情を大げさに押し出すより、迷いのあるまま言葉を置いていく。そのため、強い自己主張よりも、状況を見つめる視線が前に出る。ラップ・アルバムでありながら、聴き進めるほどに日記のような質感が残るのがこの作品の特徴だ。
ゲストも豪華だ。The Weeknd、Rihanna、Kendrick Lamar、Rick Ross、Lil Wayne、Nicki Minaj、André 3000、Birdman、Stevie Wonderまで参加している。中でもThe Weekndは当時の空気を象徴する存在で、のちのR&Bの流れを考えるうえでも重要な接点になっている。Drake自身と同様、歌とラップのあいだを行き来する感覚を、同時代の別方向から押し広げた存在だ。
代表曲が作品の輪郭をはっきりさせる
シングルでは「Headlines」「Make Me Proud」「The Motto」、Rihannaを迎えた表題曲「Take Care」が知られている。「Headlines」は、Drakeの自己確認のような語りが前に出る曲で、アルバムの輪郭をつかみやすい。「Make Me Proud」はNicky Minajとの掛け合いが印象的で、ポップ寄りの広がりを持つ。「The Motto」は当時のヒット感覚を強く持った楽曲で、後年まで引用されるフレーズも残した。「Take Care」はRihannaの存在感が大きく、アルバム名を冠した曲として感情の中心に置かれている。
初週売上は63万1,000枚で、Billboard 200で1位を記録した。批評面でも高く評価され、Metacriticでは78点。2013年のグラミー賞では最優秀ラップ・アルバム賞を受賞している。こうした実績は、Drakeが単なる人気ラッパーではなく、2010年代のメインストリームR&B/ヒップホップの方向性を形づくる存在として見られていたことを示している。
このUS盤について
本盤はGatefold sleeve仕様で、USのYoung Money盤として流通したものだ。なお、内ジャケットには「The Motto (Feat. Lil Wayne)」と「Hate Sleeping Alone」が収録曲として記載されているが、この盤には実際には入っていない。こうした表記の違いも、初期プレスならではの資料性を持つ部分だろう。レコードとして手に取ると、音源そのものだけでなく、2011年当時のパッケージの空気まで含めて残っていることがわかる。
『Take Care』は、Drakeのキャリアの中でも、ラップとR&Bを横断する手つきが最も明確に形になった作品のひとつだ。以後の彼の作品群を見ても、このアルバムで固まった感情表現や音の設計は長く続いていく。2010年代のヒップホップを語るうえで外せない一枚として、今も参照され続けている。
トラックリスト
- A1 Over My Dead Body
- A2 Shot For Me
- A3 Headlines
- A4 Crew Love
- B1 Take Care
- Marvins Room / Buried Alive (Interlude)
- B3 Under Ground Kings
- B4 We'll Be Fine
- C1 Make Me Proud
- C2 Lord Knows
- Cameras / Good Ones Go (Interlude)
- C4 Doing It Wrong
- D1 The Real Her
- D2 Look What You've Done
- D3 HYFR (Hell Ya Fucking Right)
- D4 Practice
- D5 The Ride