Michael Jackson - Ben (1972)
Michael Jackson『Ben』(1972年・US Motown盤)について
1972年にMotownから出たマイケル・ジャクソンのソロ2作目『Ben』は、少年期の歌声がまだ残る時期の作品でありながら、すでにソロ・アーティストとしての輪郭がはっきり見えてくるアルバムだ。ジャクソン5での活動と並行して進められたソロ作の中でも、この盤は特に重要で、表題曲「Ben」が彼にとって初の全米1位シングルになったことで知られている。映画『ベン』の主題歌として書かれた曲が、結果的にマイケル本人のキャリアを押し上げる代表曲になった流れは、この時期の彼の存在感をそのまま示している。
アルバムの位置づけ
『Ben』は1972年8月4日にMotownレーベルから発売された。録音は1971年11月から1972年2月にかけて行われ、モータウン創業者ベリー・ゴーディがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。タイトル曲はもちろん、当時のマイケルがソウル、ポップ、映画音楽の要素を横断しながら歌っていたことがよく分かる内容で、後年の大作主義とは違う、コンパクトで曲単位の強さが前面に出た時期の記録でもある。
マイケルはこの作品の時点でまだ10代前半だが、歌い回しにはすでに独特の間合いがある。高音域の伸びだけで押すのではなく、フレーズの頭や語尾に細かな表情を入れていく歌い方が目立つ。実際に聴くと、子どもらしい透明感と、ソウル・シンガーとしての芯が同居している感触がある。Motownの制作環境の中で磨かれた歌唱だが、単なる“子役の歌”で終わっていない点がこの時期のマイケルらしいところだ。
表題曲「Ben」の背景
「Ben」は、Don BlackとWalter Scharfが1972年のホラー映画『ベン』のために書いた楽曲で、もともとはドニー・オズモンドに渡る予定だったという経緯がある。結果としてマイケルに回り、彼の歌で大きく広まった。シングルは1972年10月14日付のBillboard Hot 100で1位を獲得し、マイケルにとってソロ初の全米No.1ヒットになった。オーストラリアでは8週連続1位、UKでも最高7位を記録しており、アメリカ国内だけでなく海外でも強い反応を得た。
歌詞の内容は、映画に結びついた友情や孤独の感情を軸にしている。マイケルの歌声がその感情線をまっすぐに運ぶため、楽曲自体のドラマ性が前に出る。第30回ゴールデングローブ賞の主題歌賞を受賞し、アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされたことも、この曲の評価を裏づけている。授賞式でマイケル本人がこの曲を生演奏した、という事実も残っている。
収録曲とサウンド
アルバムには、タイトル曲のほかに「My Girl」「People Make The World Go Round」「Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day」などのカバーも入っている。いずれもソウル/R&Bの文脈にある曲で、当時のモータウンらしいレパートリー選びだ。オリジナル曲とカバーが混在する構成は、若い歌い手としての力量を示す場でもあり、同時にレーベルがマイケルをどう育てようとしていたかも見えてくる。
演奏やアレンジは、過剰に厚くせず、歌を前へ出す設計が中心だ。バラードの比重が高く、派手な展開よりも、メロディの運びと声のニュアンスで聴かせる場面が多い。ジャクソン5のヒット曲群に比べると、個人の声がより直接的に記録されている印象がある。ソウル、ポップ、映画主題歌という複数の要素が、Motownの整ったプロダクションの中で一つにまとまっている。
ジャケット違いについて
このUS盤では、初回プレスとそれ以降でスリーヴが異なる。初回盤は、表題曲「Ben」にちなんだネズミの写真を使ったジャケットで、のちに子ども向けとしては少し怖いと判断され、ネズミを外したデザインに差し替えられた。同じカタログ番号のまま、外装だけが変更された点が特徴だ。現在流通する再発や後発プレスでは、後者のマイルドなデザインが見られることが多い。
同時代の文脈
1972年のMotownは、すでにミラクルズ、シュープリームス、テンプテーションズ、スティーヴィー・ワンダーらの実績を背負いながら、次の世代の看板を探していた時期でもある。その中でマイケル・ジャクソンは、まだ若い年齢ながら、ソロのヒット曲を持つ存在として明確に前へ出ていく。後年の巨大なポップ・スター像から振り返ると、この『Ben』は出発点の一つであり、同時にMotown時代のマイケルの歌唱がもっとも素直に残った作品の一つでもある。
『Ben』は、少年歌手のソロ作という枠を超えて、Motownのソウル制作と映画主題歌の成功が重なった1972年の記録として残る。表題曲の実績だけでなく、アルバム全体にある端正な作りと、まだ幼さを含む声の力が、この時期ならではの聴きどころになっている。
トラックリスト
- A1 Ben 2:42
- A2 Greatest Show On Earth 2:47
- A3 People Make The World Go Round 3:15
- A4 We've Got A Good Thing Going 3:01
- A5 Everybody's Somebody's Fool 2:58
- B1 My Girl 3:05
- B2 What Goes Around Comes Around 3:35
- B3 In Our Small Way 3:39
- B4 Shoo Be Doo Be Doo Da Day 3:19
- B5 You Can Cry On My Shoulder 2:32
動画プレイリスト
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Michael Jackson - 1972 - 01 - Ben
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Michael Jackson - 1972 - 02 - Greatest Show on Earth
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Michael Jackson - 1972 - 03 - People Make the World Go 'Round
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Michael Jackson - 1972 - 04 - We've Got a Good Thing Going
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Michael Jackson - 1972 - 05 - Everybody's Somebody's Fool
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Michael Jackson - 1972 - 06 - My Girl
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Michael Jackson - 1972 - 07 - What Goes Around Comes Around
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Michael Jackson - 1972 - 08 - In Our Small Way
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Michael Jackson - 1972 - 09 - Shoo Be Doo Be Doo Da Day
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Michael Jackson - 1972 - 10 - You Can Cry on My Shoulder