Nina Simone - Little Girl Blue (1959)
Nina Simone 1959

Nina Simone - Little Girl Blue (1959)

Jazz Soul-Jazz Cool Jazz

Nina Simone『Little Girl Blue』(1959)レビュー

Nina Simoneの『Little Girl Blue』は、1959年にBethlehem Recordsから出たデビュー・スタジオ・アルバムだ。録音は1957年12月、ニューヨークのBeltone Studiosで行われている。ジャズの枠に収まりきらない歌とピアノ、そして曲の置き方まで含めて、すでに完成度の高い初作という印象が強い作品である。

このアルバムを語るうえで外せないのが、Nina Simoneにとっての出発点としての位置づけだ。のちに公民権運動と結びついた強い表現で知られる彼女だが、この時点ではまだ広く名前が知られた存在ではない。それでも、声の低い重心、間の取り方、ピアノのタッチには、初録音とは思えないまとまりがある。ジャズのスタンダードを中心にしながら、クラシックの訓練を受けた奏者らしい輪郭がはっきり出ている。

収録曲とアルバムの核

本作でまず注目されるのは「I Loves You, Porgy」だ。Bethlehem Recordsにとっても、この曲は最大のヒットになったとされる。シングルとしても反応があり、当時のNina Simoneを一気に注目株へ押し上げた重要曲である。歌い回しは大げさに動かず、フレーズの終わりを少しだけ沈めるように置いていく。その抑えた歌唱が、曲の切実さを前に出している。

もうひとつの代表曲が「My Baby Just Cares for Me」だ。1959年時点では後年ほどの知名度はまだなく、アルバムの中の一曲として受け止められていたが、1980年代にアニメーション映像の大量放送をきっかけに再び広く知られるようになった。つまりこの曲は、リリース当時と後年で意味合いが大きく変わった代表例でもある。

収録曲全体は、スタンダードを中心に構成されている。派手なアレンジで押すのではなく、ピアノ、ベース、ドラムという小編成の中で、声と和声の動きを丁寧に聞かせる作りだ。演奏はJimmy Bondのダブルベース、Albert “Tootie” Heathのドラムが支え、Nina Simone自身がボーカル、ピアノ、アレンジを担っている。編成の少なさが、そのまま音の密度につながっている。

当時のジャズ文脈の中で

1959年という年は、ジャズの歴史の中でも重要な時期だ。ハードバップ、クール・ジャズ、ソウル寄りの表現が並走していた時代で、Nina Simoneのこの作品もその境界線上に置かれている。ジャズ・ヴォーカルの文脈で言えば、Carmen McRaeやChris Connorのような、言葉を過度に飾らずにフレーズを組み立てる歌い手とも比較されやすい。だがNina Simoneの場合は、ピアノを自分で弾きながら歌うことが作品の骨格になっていて、そこが決定的に違う。

また、Bethlehem Recordsというレーベルの性格もこのアルバムに合っている。1950年代のBethlehemは、アーティストに創造的な裁量を与える方針で知られ、ジャケット・デザインにも力を入れていた。Nina Simoneのように、歌唱だけでなく曲の解釈そのものが重要な表現者には、こうした環境がよく噛み合っていたように見える。

盤としての特徴

この1959年盤は、表記や仕様の面で少しややこしい。タイトルは『Little Girl Blue』だが、別名として『Jazz As Played In An Exclusive Side Street Club』でも知られている。とはいえ、バック・カバーとレーベル面には『Little Girl Blue』と記されている。さらに、モノ盤のカタログ番号BCP-6028も裏面に見られるため、初期プレス周辺には表記の揺れがある。

また、Bethlehemの米国盤にはポリスチレン製のプレスが多いとされる。音の印象としては、派手な低音増強よりも中域の輪郭が前に出やすいタイプで、Nina Simoneの声とピアノの分離がわかりやすい。盤の仕様も含めて、1950年代末のジャズ・アルバムらしい手触りがある。

まとめ

『Little Girl Blue』は、Nina Simoneのデビュー作でありながら、単なる新人紹介盤では終わっていない。ヒット曲「I Loves You, Porgy」を抱え、のちに再評価される「My Baby Just Cares for Me」も収め、彼女の歌とピアノ、そして曲をどう置くかという感覚まで最初から示している。1959年の時点で、すでにこの人の表現が独自の方向を向いていたことがよくわかる作品だ。

ジャズ・ヴォーカルの初期作として見ても、ソウル・ジャズやクール・ジャズの交点にある記録として見ても、かなり重要な一枚である。後年の強いメッセージ性を知ってから聴くと、ここにある抑制のきいた語り口が、むしろその後のNina Simone像の原型に見えてくる。

トラックリスト

  1. A1 Mood Indigo 4:00
  2. A2 Don't Smoke In Bed 3:09
  3. A3 He Needs Me 2:26
  4. A4 Little Girl Blue 4:12
  5. A5 Love Me Or Leave Me 3:18
  6. A6 My Baby Just Cares For Me 3:33
  7. B1 Good Bait 5:25
  8. B2 Plain Gold Ring 3:50
  9. B3 You'll Never Walk Alone 3:58
  10. B4 I Loves You Porgy 4:03
  11. B5 Central Park Blues 3:05

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Soul-Jazz"

toast