Hubert Laws - Afro-Classic (1970)
Hubert Laws『Afro-Classic』について
Hubert Lawsの『Afro-Classic』は、CTI Recordsから1970年に登場した作品で、フルート奏者としてのLawsを広く印象づけた初期の代表作にあたる。録音は1970年12月、Van Gelder Studiosで行われており、CTIらしい整理された音像と、楽器同士の輪郭がはっきりした仕上がりが特徴になっている。ジャズを軸にしながら、クラシックやポップの素材を取り込み、当時のCTIが進めていたクロスオーバー路線をよく示す内容だ。
作品の位置づけ
Hubert Lawsは1939年生まれのフルート奏者で、ジャズの中でフルートを前面に押し出した重要な存在のひとりだ。『Afro-Classic』は、そうしたLawsの個性を、Creed Taylor主導のCTIサウンドの中で明確に打ち出した作品として見てよさそうだ。AllMusicでも、Lawsと編曲者Don Sebeskyの組み合わせが、ジャズ、クラシック、ポップを滑らかに接続した点が高く評価されている。技巧の見せ場だけで押すのではなく、音色とアレンジのまとまりで聴かせる構成になっているのが大きい。
CTIは1970年代初頭に、録音の明瞭さ、洗練された編曲、スタジオの完成度を前面に出したレーベルとして存在感を強めていった。この時期の作品群は、従来のハード・バップやモード・ジャズとは別の文脈で語られることが多く、『Afro-Classic』もその流れの中に置ける。ジャズ・フルートの役割を広げた作品として扱われることがあるのも、その文脈に沿っている。
収録内容と聴きどころ
収録曲には、James Taylorの「Fire and Rain」、バッハやモーツァルト、フランシス・レイの映画音楽など、出自の異なる楽曲が並ぶ。こうした選曲自体がCTI的で、ジャンルの境界をまたぐ素材を、同じ音楽語法の中で再構成していく姿勢が見える。既存曲の旋律をそのままなぞるのではなく、フルートの線とオーケストレーションのバランスで聴かせる作りだ。
とくにクラシック由来の素材では、Lawsの音の立ち上がりと、Sebeskyの書法が噛み合う場面が目立つ。単独のソロで押し切るというより、アンサンブル全体の中でフルートがどう機能するかを示す内容で、当時としては珍しい設計だったはずだ。フルートという楽器が、軽い装飾的な役割だけでなく、主役として十分に成立することを示したアルバムでもある。
録音と盤の仕様
録音はRudy Van Gelderのスタジオで行われており、CTI作品らしい音の見通しの良さがある。スパイン表記は「CTI 6006 Hubert Laws:Afro-Classic Universal Stereo」とされ、今回の盤はノン・ゲートフォールド仕様。ジャケットの見せ方も含めて、当時のCTIが目指していた統一感のあるパッケージングがうかがえる。
なお、オリジナルのリリース年は1970年だが、実際の市場での初出は1971年と案内されることもある。今回の盤情報では1970年の作品として扱えるため、その年のCTI初期カタログの一枚として捉えるのが自然だろう。
同時代の文脈
この時期のCTI周辺では、Grover Washington, Jr.やGeorge Bensonのように、ジャズをより広いリスナー層へ開くアプローチが進んでいた。『Afro-Classic』もその流れの中で、インストゥルメンタル・ジャズを整ったアレンジと録音で提示する作品として位置づけられる。Miles Davis以後の電化ジャズとは別の方向で、都会的で整理されたクロスオーバーを作っていたのがCTIの特徴で、その中でHubert Lawsはフルート奏者として重要な役割を担っていた。
後年のフュージョンや、クラシック要素を取り込むジャズ作品を考えると、このアルバムの立ち位置も見えやすい。ジャンルの混ぜ方が派手すぎず、素材の選び方と音の配置で成立させるタイプの作品だ。
まとめ
『Afro-Classic』は、Hubert Lawsのフルートを軸に、CTIのレーベル美学をはっきり示した一枚だ。クラシック、ポップ、ジャズの素材をまとめながら、演奏の輪郭を曖昧にしない点が印象に残る。フルートがジャズの中心に立つこと、そしてその音が洗練されたアレンジの中でどこまで広がるかを示した作品として、Lawsの初期代表作に数えられるのは自然だろう。
トラックリスト
- A1 Fire And Rain 7:55
- A2 Allegro From Concerto #3 In D 3:40
- A3 Theme From Love Story 7:25
- B1 Passacaglia In C Minor 15:10
- B2 Flute Sonata In F 3:15