Piper - Summer Breeze (1983)
Piper『Summer Breeze』レビュー
1983年に日本で登場したPiperの『Summer Breeze』は、静岡・浜松で結成されたシティポップ・バンドの初期像をそのまま封じ込めたような作品だ。ギター/ヴォーカルの山本圭右を中心に、山本幸介、伊藤亘、島村隆、さらに村田和人らが参加し、バンドとしてのまとまりと当時の都会的な音作りが同居している。レーベルはユピテル・レコード。80年代前半の国産ポップスの中でも、英米ロック由来の演奏感と、軽快な日本語ポップの感触が近い距離で並ぶ一枚である。
夏のイメージを先に立てる、整ったシティポップ
タイトル曲「Summer Breeze」を中心に、「Samba Night」「Night Shore」など、曲名の時点で季節感がはっきりしている。実際の音もその印象に沿っていて、硬質すぎないリズム、軽く抜けるキーボード、コーラスの重なりが、海辺や夜のドライブを思わせる配置になっている。派手な展開で押すタイプではなく、ひとつひとつの音の置き方で空気を作る作風。歌が前に出る曲でも、演奏の輪郭が崩れないのがPiperらしいところだ。
この時期のPiperは、ウィッシュボーン・アッシュやキャメルといった英国ロックの影響を意識しつつ、ファンクやソウル、フュージョンの要素を取り込んでいるとされる。『Summer Breeze』でも、その骨格は見えやすい。ギターはロック由来の芯を保ち、ベースとドラムの刻みは軽やかで、シンセやエレクトリック・ドラムが80年代らしい質感を与える。結果として、ロックの演奏力とシティポップの洗練が同居する仕上がりになっている。
村田和人の参加が残す輪郭
本作には村田和人がコーラス、ヴォーカル、アコースティック・ギターで参加している。村田は同時代のシティポップを語るうえで外せない存在で、山本圭右とも近い関係にあったことが知られている。『Summer Breeze』におけるコーラスワークの整い方や、音の柔らかいまとまりには、その周辺の感覚が反映されている印象がある。バンドの演奏に、外部参加者の明確な色が加わっているのがわかりやすいポイントだ。
Piperは後年、シティポップ再評価の文脈で海外からも注目されるようになるが、このアルバムの時点ですでに、その後の評価につながる要素を備えている。日本のバンドとしては珍しく、AORやフュージョンの流れと、英国ロックの感触を同じ画面に収めているところが特徴的だ。山下達郎や高中正義、YMO周辺の“都会的なBGM感覚”とも地続きの空気があるが、Piperはそこにバンド演奏の生々しさを残している。
80年代前半の日本ポップスの中での位置づけ
1983年という年は、シティポップやニュー・ミュージックが成熟し、打ち込みや電子音の導入がさらに進んでいた時期でもある。『Summer Breeze』は、その流れの中で、リン・ドラムなど当時の新しい機材感を取り込みながら、全体を冷たくしすぎないバランスでまとめている。電子的な質感が強いのに、曲の温度は高め。そこがこの作品の聴きどころになっている。
アルバム単位で見ると、強い個性を前面に押し出すというより、通して聴いたときの統一感で印象を残す作りだ。夏の景色を描く曲が並ぶが、単なる季節ものではなく、演奏、コーラス、編曲の細部で聴かせる内容になっている。タイトル曲が象徴的な入口になり、そのまま最後まで同じ空気を保つ構成。そこにPiperのバンドとしての完成度が見える。
まとめ
『Summer Breeze』は、Piperの初期代表作として扱われることが多い作品で、80年代前半の日本のシティポップ/AOR周辺を知るうえでも重要な一枚だ。英米ロックの影響、ファンクやソウルの感触、電子楽器の導入、そして村田和人を含む周辺人脈。その要素が、夏の風景を思わせる軽快な演奏にまとまっている。大きく主張するアルバムではないが、細部を追うほど輪郭が見えてくる内容である。
トラックリスト
- A1 Shine On 5:37
- A2 Summer Breeze 3:21
- A3 Hot Sand 3:26
- A4 Gentle Shower 3:34
- A5 Twilight 3:39
- B1 Samba Night 4:22
- B2 Starlight Love 3:06
- B3 Night Shore 3:37
- B4 Angel Smile 4:55
- B5 Moonlight Beach 4:56