Synergy - Sequencer (1976)
Synergy『Sequencer』
Synergyは、ラリー・ファストの電子音楽プロジェクト名義。『Sequencer』は1976年作として制作され、今回の日本盤は1979年にSireから出たもの。記載上のクレジットでは、℗ 1976 Passport Records, Inc.となっている。
制作背景・エピソード
『Sequencer』は1975年夏に始動し、前作『Electronic Realizations for Rock Orchestra』の直後から構想された作品。録音は主に1976年1月以降、ニュージャージー州ウエストオレンジのHouse of Musicで行われた。このスタジオは制作中に16トラックから24トラックへ、さらにMCI JH-500コンソールとJH-24を導入しており、そのアップグレードが本作の制作に直結したという。
収録曲「Classical Gas」は、新しい機材の“試運転”として最初に録音された曲で、その後のイギリス盤『Electronic Realizations』には未完成の参照ミックスが使われた。「Chateau」は、Nektarの『Recycled』をフランスで録音していた時期に、シャトー・デロヴィルのピアノで育てた断片が元になっている。「Paradox」は、Passport Recordsのマーティ・スコットの提案で、ドヴォルザーク《新世界より》第2楽章とRalph Townerの「Icarus」を組み合わせて作られた。「Sequence 14」には、レーザーショー用に試作した音素材の一部が流用されている。
時代の文脈
1976年は、Kraftwerk以後の電子音楽が、ポップやプログレ周辺から少しずつ独立した文脈を持ちはじめた時期とされる。『Sequencer』は、その流れの中で「機械そのものの音」を前面に出した作品として扱われた。Electronic Soundは、ジャケット表現も含めて“ポスト-Kraftwerk”の空気をよく映すと評している。
ラリー・ファスト自身もこの時期、マイクロプロセッサやPolymoogの開発に関わっており、作品制作と新技術の実験が並行していた。Synergy名義の作品の中でも、本作はより野心的で、より一貫した内容として位置づけられている。
後年の評価
AllMusicのStephen Thomas Erlewineは、本作を「前作ほど衝撃的ではないが、なお魅力的で予測不能な電子インストゥルメンタル集」と評し、音色や技術には時代性がある一方で、発想は新鮮だと述べている。Audio誌は、プロコフィエフやチャイコフスキー、ドヴォルザークのような大きなスケール感と、The Who的な力強さが同居するとし、「S-Scape」「Chateau」「Cybersports」を広がりのある曲として挙げた。Electronic Soundは「Classical Gas」を、電子化されたギター名演のような聴きものとして紹介している。
Cash Boxは1976年6月のレビューで「a truly remarkable album」と高く評価した。なお、確認できた範囲では、主要チャートの順位や売上の具体的な数字は見当たらない。
Synergyは、ラリー・ファストの電子音楽制作の実験場としても見られてきた名義で、『Sequencer』はその中でも制作過程の具体性がよく残る一枚。曲ごとの素材や引用の出どころがはっきりしていて、スタジオの設備更新や当時の仕事の流れが、そのまま作品の骨組みに入っているのが面白いところだ。
トラックリスト
- A1 S-Scape 5:50
- A2 Chateau 4:16
- A3 Cybersports 4:39
- A4 Classical Gas 3:00
- Paradox 7:00
- B2 (Sequence) 14 11:14
動画プレイリスト
このアーティストについて
Synergyは、アメリカのシンセサイザー奏者ラリー・ファスト(Larry Fast)のソロ・プロジェクト名だ。1951年12月10日生まれで、ニュージャージー州リ...
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