The Human Beast - Volume One (1970)
The Human Beast 1970

The Human Beast - Volume One (1970)

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The Human Beast『Volume One』(1970)

スコットランド、エディンバラ出身の短命なサイケデリック・ロック・バンド、The Human Beastが1970年に残した唯一のアルバムが『Volume One』だ。DeccaからUK盤で発表され、タイトルどおりバンドの最初期の姿をそのまま封じ込めた作品として知られている。のちにコレクターの関心を集めることになるが、当時の商業的な成績は振るわなかったとされる。いま聴くと、60年代末の空気を引きずったまま70年代へ滑り込む、英国ローカル・バンドならではの記録として見えてくる。

編成はギリーズ・ビュシャンのギター/ヴォーカル、エドワード・ジョーンズのベース/ヴォーカル、ジョン・ラムゼイのドラムを軸にした3人組で、元々はSkinという名義で活動していたという。実際のレコードでは、ギターの歪み、リズムの重さ、そして曲によってはクラリネットの存在感が目立つ。いわゆる大作志向のプログレというより、ブルース・ロックの骨格に、サイケデリックな展開や重い音像を重ねたタイプのアルバムという印象が強い。

作品の位置づけ

『Volume One』は、バンドにとって事実上のデビュー作であり、同時に最後のアルバムでもある。70年という時期を考えると、英国ロックはすでにハード・ロック化とプログレ化が進みつつあり、その手前の感触を残した作品が各地から現れていた。この盤もその流れの中に置ける。大手Deccaからのリリースでありながら、派手な売り出しよりも、ローカル・バンドの荒い手触りを残したまま出てきた一枚として受け取られている。

同時代の文脈で並べるなら、重心の低いリフを前面に出す点ではハード・ロック寄りの作品群と接点があり、曲の運びや音のうねりにはサイケデリック期の英国バンドらしい流れもある。とはいえ、明確にどこかの流派へ収まるというより、60年代末の残響を引きずったまま、70年代初頭の硬さへ向かった途中経過の記録という位置づけがしっくりくる。

聴きどころ

このアルバムでまず耳に残るのは、ギターの歪み方とリズム隊の押し出しだ。音の作りは決して洗練されているわけではないが、そのぶん演奏の輪郭がはっきりしていて、曲が進むにつれてじわじわ圧をかけてくる。スタジオ作品としての整然さよりも、バンドの現場感を優先したような作りで、当時の英国インディー・シーン以前の、地方バンドの録音に近い生々しさがある。

また、アシッド感のある曲では、単純なコード進行の上に不穏な響きが乗り、歌メロもすっきり割り切れない。派手な技巧で押すのではなく、同じフレーズを少しずつずらしながら熱を上げていくタイプの展開が多い。聴感上はハードさが前に出る一方で、完全に直線的ではなく、どこか朧げな陰影を残すところがこの作品の個性になっている。

代表曲について

収録曲の中では、アルバム冒頭からバンドの方向性を示す曲が重要だ。いきなり音圧で押し切るのではなく、まずリフとリズムを提示し、その上でヴォーカルが乗る形が多いので、作品全体の性格が早い段階でつかめる。こうした導入部は、単に重いだけではなく、サイケデリック・ロック特有の「曲がどこへ向かうか分からない」感覚を残している。

一方で、より長めの展開を持つ曲では、ハード・ロック的な推進力と、当時の英国アンダーグラウンドに通じる曖昧さが同居する。クラリネットが入る場面では、ロックの定型から少し外れた色合いが加わり、アルバムの中でも印象が変わる。曲単位で見ると、単なる重厚路線ではなく、曲ごとに表情を変えながら進む構成になっている。

録音と初期70年代UKロックとしての面白さ

Deccaの1970年盤らしく、音作りは当時の英国ロックの標準的な範囲にありつつ、地方バンドらしい粗さが残る。過度な加工が少ないため、ドラムの鳴りやベースの前進感、ギターのざらつきがそのまま伝わってくる。こうした質感は、後年の再発盤で聴いても大きく変わらない一方、オリジナルの時代感を持ったジャケットやレーベル面も含めて、70年という年の空気を感じさせる。

総じて『Volume One』は、華やかなヒット作というより、短命バンドが残した初期70年代英国ロックの断片として価値のある一枚だ。サイケデリック、ハード、アシッドという要素が並ぶが、実際の聴感はそれらの境目を行き来するタイプで、バンドの出自と時代性がそのまま記録されている。コレクターの関心が集まるのも、そうした一回性の強さに理由があるように見える。

トラックリスト

  1. A1 Mystic Man 6:47
  2. A2 Appearance Is Everything, Style Is A Way Of Living 4:31
  3. A3 Brush With The Midnight Butterfly 5:19
  4. B1 Maybe Someday 6:19
  5. B2 Reality Presented As An Alternative 4:57
  6. B3 Naked Breakfast 3:06
  7. B4 Circle Of The Night 3:09

動画

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