Subway - Subway (1971)
Subway / Subway
Subwayの『Subway』は、1971年にフランスで発表されたデュオ作品で、のちにカルト盤として語られるようになった1枚である。メンバーはMalcolm WatsonとIrv Mowreyの2人。アメリカ・シアトル出身のMowreyと、イギリス側のWatsonが組んだフォーク・デュオで、ロンドンで出会ったのち、フランスで再合流して録音に至ったという流れが知られている。2005年にはドイツのAmber Soundroomから180g仕様で再発され、折りたたみ式のインサートを伴うLPとして流通した。
この作品が面白いのは、いわゆる大きなロック・ムーブメントの中心で作られたアルバムというより、移動の途中で生まれた記録のような性格を持っている点だ。2人は地下鉄や路上で曲を増やしながら活動し、英国でのビザ問題をきっかけに一度離れ、その後フランスで録音にこぎつけたとされる。制作はパリ南方の農場を改装したスタジオで、短いセッションの中で進められたという。長い昼食の習慣や、屋外にケーブルを引いて録った曲、ニワトリの鳴き声が残ったテイクなど、現場の空気がそのまま音に入っているエピソードが残る。
音楽の中心にあるのは、12弦ギター、ヴァイオリン、そして必要に応じて加わるバンド編成の素朴な響きである。インクレディブル・ストリング・バンドを思わせるフォークの手触りに、サイケデリックな広がりが重なる作りで、派手な演出よりも、曲そのものの輪郭が前に出る。題材も若さ、恋愛、砂漠の記憶、花売りの女性など、個人的な視点に寄ったものが多い。ロックの熱量で押すタイプではなく、室内楽的なまとまりを保ちながら進むアルバムという印象が強い。
当時の商業的な成功については、大きなヒット作として扱われた形跡は見当たらない。その一方で、後年になってから「幻のアシッド・フォーク/サイケ」作品として見直された経緯がある。プレス枚数については200枚説と2000枚前後説が並んで語られており、流通量の少なさ自体がこの作品の神秘性を支えている。現在では、レア盤としての価値と、内容面の評価が重なって語られることが多い。
同時代の文脈で見ると、フォークの語法を土台にしながら、サイケデリック・ロックの感触を取り込んだ作品群の一角に置ける。けれども、同じ時期の英米フォーク・ロックの中でも、より手作り感が強く、演奏と録音の距離が近い。作品全体に、都市の路上演奏から農場スタジオまでの移動がそのまま刻まれているような印象がある。デュオとしてのSubwayはこのアルバムを唯一の代表作として知られ、その後は1976年にも別作品を残している。
2005年のAmber Soundroom盤は、オリジナル期の作品を掘り起こした再発として位置づけられる。ドイツの再発レーベルらしく、長く入手しにくかったプログレッシヴ/フォーク系LPを丁寧に復刻する流れの中にある盤で、180gの重量盤仕様も含めてコレクター向けの体裁が整えられている。オリジナルの時代性を伝える内容と、再発盤としての保存性が両立した1枚として見てよさそうだ。
『Subway』は、派手な主張よりも、録音の場所や事情まで含めて音に残っているタイプの作品である。フォーク、アシッド・ロック、サイケデリック・ロックという枠の中でも、2人の声と弦のやり取りが中心にあり、1971年という時代の空気を静かに伝えるアルバムだといえる。
トラックリスト
- A1 I Am A Child
- A2 Song For Sinking Shelters
- A3 Warm You Are
- A4 All The Good Things
- B1 Enturbulation-Free Form
- B2 Arizona Sands
- B3 Rosanna Of The Roses
- B4 Can I Trade With You My Mind