The Wild Flowers - Sometime Soon (1988)
The Wild Flowers『Sometime Soon』(1988)
The Wild Flowersの『Sometime Soon』は、1988年にUKのChapter 22から出たアルバムで、Wolverhampton出身のポストパンク/インディー・ロック・バンドが、80年代後半の英国オルタナティブ文脈の中で手にしたまとまった作品だ。バンドは1983年結成で、のちに解散するまで活動を続けたが、この時期の彼らは米国市場も強く意識していた。実際、当時の紹介ではSlashと結びついた英国バンドのひとつとして扱われ、アメリカ側のカレッジ・ラジオやオルタナ系の受け皿を見据えた動きが見える。
作品の輪郭
収録曲の先行イメージを作ったのは「Broken Chains」と「Take Me For A Ride」だった。とくに「Broken Chains」は、発売当時のBillboardでも触れられていて、ジャンギーなギターの推進力と、少し暗さを含んだムードが同居する曲として見られていた。派手に押し切るタイプではなく、リズムの粘りとギターの引っかかりで引っぱるつくり。カレッジ・ラジオ向きという評価も、そのあたりの手触りと合っている。
このアルバムは、The Wild Flowersにとって重要な位置づけにある。後年の回想では、最初から最後まで一枚としての強度がそろった、まとまったアルバムとして扱われている。バンド自身が制作に関わり、Mark Stewartとの共同プロデュースで仕上げられた点も、この作品の輪郭をはっきりさせている。単なるデモの延長ではなく、アルバムとしての形を意識した作り。
サウンドと時代背景
ジャンル表記ではElectronic、Rock、Alternative Rock、New Wave、Goth Rock、Indie Rockが並ぶが、実際の印象は80年代後半の英国インディーにある典型的な要素をきちんと持った内容だ。ギターは前に出るが、音の処理はただ荒いだけではなく、少し冷えた質感もある。ポストパンク以降の緊張感と、ニューウェーブ由来の整理された響き、その間を行き来するような作りで、同時代の英国バンドの中でも、メロディを前に出しすぎずに曲を進めるタイプに近い。
同じ時代の英国オルタナや、米国の大学ラジオ圏で受け入れられたバンド群を思い浮かべると、この作品の立ち位置が見えやすい。商業的な大ヒットを狙う作りではなく、アルバム全体の空気と曲の連なりで印象を残すタイプ。Billboardのレビューでも、まとまりよりも独特のねじれた魅力がある作品として受け止められていた。
レーベルとリリースの位置づけ
リリースは英国盤で、Chapter 22のカタログ番号はCHAP LP25。盤にはプリント入りのインナーが付属している。Chapter 22はCraig Jenningsが立ち上げたUKレーベルで、80年代英国インディーの動きを記録する場のひとつでもあった。大手の主流チャートを狙うというより、当時のオルタナティブな流通の中で作品を届ける役割が強い。
実際、この『Sometime Soon』も、チャート上の大きな実績より、業界紙やラジオ局での反応が目立つ作品として扱われていた。Gavin Reportでも注目作として取り上げられており、米国のカレッジ・ラジオ圏での広がりを狙った空気がはっきりしている。
聴きどころ
アルバム全体を通すと、派手なフックを連発するというより、ギターの鳴り、リズムの引き締め方、ボーカルの置き方で曲を積み上げる印象が強い。耳に残るのは、前に出すぎないのに輪郭が崩れない演奏。80年代後半の英国インディーらしい、硬さと素朴さのバランスがある。Billboardが触れた「Broken Chains」のような曲は、その性格がわかりやすい入口になっている。
後年の視点で見ると、『Sometime Soon』はThe Wild Flowersの中でも、バンドの方向性がいちばん明確にまとまった時期の記録として読める。Wolverhampton発のポストパンク/インディー・ロックが、米国のオルタナティブ回路を意識しながら形になった一枚。大きく売れた作品ではないが、当時の英国と米国のインディー文化をつなぐ実例として、今見ても筋の通ったアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Take Me For A Ride
- A2 Broken Chains
- A3 Apple Creek
- A4 The Welcome Son
- A5 That Ain't True
- B1 Head Of Nothing
- B2 Set Me Alight
- B3 Don't Know Where I'm Going
- B4 Is This The Place
- B5 Melon Patch
- B6 Last Train To Nowhere