The Danse Society - Heaven Is Waiting (1984)
The Danse Society『Heaven Is Waiting』
The Danse Societyは、イングランド・バーンズリー出身のポストパンク/ゴシック・ロック・バンドで、1980年結成。本作『Heaven Is Waiting』は、メジャーのAristaから発表した2作目のアルバムで、オリジナルは1984年リリースである。自主レーベルでのシングル「Seduction」がインディー・チャートで評価を集め、その流れで大型レーベルに移ったバンドの、いわば転機に置かれた作品になっている。
メジャー移籍後のバンド像を示す1枚
この時期のThe Danse Societyは、Paul Gilmartin(ドラム)、Paul Nash(ギター)、Steve Rawlings(ボーカル)、Lyndon Scarfe(キーボード)、Tim Wright(ベース)という編成。『Heaven Is Waiting』は、そうした初期ラインナップがまとまって残した代表作として扱われることが多い。録音は1983年10月から12月にかけて行われ、Britannia Row StudiosとRAKでの作業がクレジットされている。内袋には、A1、A5、B3、B5はBritannia Rowでエンジニアリングされ、RAKでミックスされたこと、別の曲は再ミックスや別スタジオでの録音が行われたことが記されている。
収録曲の中では、Rolling Stonesの「2000 Light Years From Home」カバーが目を引く。Mick JaggerとKeith Richardsによる1967年のサイケデリック・ナンバーを取り上げており、本作の中でも異質さがはっきりした1曲だ。シングルとしても出ており、アルバムの中で外部曲として機能している。
1984年という時代の輪郭
1984年のUKゴシック/ポストパンク周辺は、初期の鋭さを保ちながら、より整ったプロダクションやニューウェイヴ寄りの質感へ寄っていく時期でもある。The Danse Societyもその流れの中で、暗いムードを前面に置きつつ、メジャー流通に乗る音作りへ踏み込んでいる。レーベルはArista、カタログ番号は205 972。裏面にはAriola Group Of Companies配給、UKではPolygram Record Operations Ltd.による流通表記があり、西ドイツのSonopress製造、Mohndruck印刷のジャケットという、当時の欧州盤らしい仕様になっている。
盤面は1984年1月以降に使われたAristaの紫と黒のラベルデザイン。センター・ラベルにはLC 3484の表記があり、印刷インナーにはクレジットが入る。オリジナル盤らしい情報量の多い作りで、同時代の輸入盤に見られる実務的な体裁がそのまま残っている。
作品の位置づけ
『Heaven Is Waiting』は、バンドのキャリアの中で商業的に最も高い位置に届いたアルバムでもある。全英アルバムチャートでは39位を記録しており、これがThe Danse Societyの最高位となっている。自主盤での評価を足がかりにメジャーへ進み、一定の広がりを得た結果として見やすい。
一方で、この作品のあとにLyndon Scarfeが脱退し、David Whitakerが加入する。つまり本作は、初期編成の終着点でもある。バンドの内側では、ここから次の段階に移る直前の記録になっている。
聴感上の印象
実際に耳を通すと、低音の押し出しとリズムの前進感がまず残る。ギターは必要以上に前へ出ず、鍵盤とボーカルの配置で曲の輪郭を作る場面が多い。Steve Rawlingsの声は、感情を大きく振りかぶるよりも、一定の距離感を保ったままフレーズを積むタイプで、バンド全体の冷えた空気を支えている。派手な展開より、曲ごとの配置や音の隙間で聴かせる作り。そうした部分に、このバンドらしさが出ている。
批評面では評価が割れた作品でもある。後年の回顧では、ムードの統一感を認めつつ、楽曲の印象の残り方に触れる声がある。ただ、少なくともこの盤では、The Danse Societyがインディー時代の感触を保ったまま、より大きな流通の中で自分たちの輪郭を試していたことがよく分かる。ゴシック・ロック、ポストパンク、ニューウェイヴの接点にある1枚として、1984年のUKシーンをそのまま閉じ込めたような記録になっている。
トラックリスト
- A1 Come Inside 8:35
- A2 Wake Up 4:53
- A3 Angel 4:43
- A4 Where Are You Now 4:12
- A5 Red Light (Shine) 2:50
- B1 Heaven Is Waiting 3:41
- B2 The Hurt 3:50
- B3 2000 Light Years From Home 3:55
- B4 Valiant To Vile 3:30
- B5 The Night 6:21