Working Week - Compañeros (1986)
Working Week『Compañeros』(1986)
Working Weekの『Compañeros』は、1986年にUKのVirginから出た2作目のアルバムである。バンドは1983年結成の英国グループで、中心にいたのはSimon Booth、Juliet Roberts、Larry Stabbins。前作『Working Nights』でジャズ寄りのソウル/ダンス・サウンドを打ち出したあと、本作ではその輪郭を保ちながら、ラテンやファンク、アメリカン・ソウルの要素をさらに広げている。ジャズの技巧を前面に出すだけではなく、歌ものとしての流れとリズムの推進力を両立させた一枚だ。
作品の位置づけ
タイトルの“Compañeros”は、単なる「仲間」ではなく、「同じ目的を共有する同志」という意味合いが強い。制作時のバンドは、前作の反応を受けてヨーロッパを中心にツアーを重ね、演奏面でもまとまりを増していた時期にあたる。アルバム全体には、反人種差別や社会的連帯といった視点が通っており、内容面でもその言葉と響き合っている。中でも「Don’t You Touch My Friend」は、人種差別への反応として語られている曲で、作品のテーマを端的に示す存在になっている。
チャート面では英国アルバム・チャートで最高72位、1週のみのチャートインにとどまったが、前作『Working Nights』が一定の成功を収めた流れの中で、Working Weekが単なる“英国のジャズ・リバイバル”の枠に収まらないことを示した作品として見られている。商業的な大ヒット作ではないが、バンドの方向性をはっきり刻んだアルバムである。
サウンドと演奏
このアルバムの核は、ジャズの洗練を土台にしながら、ファンクやソウルの手触りをしっかり残している点にある。Ben Roganがサウンドをまとめ、Bosco D’Oliveiraのブラジル系パーカッション、Ian Princeのキーボードなど、多くのセッション奏者が参加している。そうした編成の厚みが、曲ごとの色の違いをはっきり出している。
実際に聴くと、ビートの置き方がかなり重要な作品であることがわかる。軽く流れるだけのクロスオーバーではなく、ベースやドラムが前に出る場面が多く、そこにホーンやキーボード、ボーカルが絡む構図。踊れる感触を保ちながら、演奏の細部にはジャズ由来の緊張感が残っている。Juliet Robertsの歌は、ソウル寄りの芯の強さを持ちながら、バンドのアンサンブルに埋もれない。Larry Stabbinsのサックスも、単なる装飾ではなく、曲の輪郭を決める役割を担っている。
同時代の文脈
1980年代半ばの英国では、ジャズを基盤にした新しいダンス・ミュージックの流れが少しずつ広がっていた。後のアシッド・ジャズの前史として語られることも多いが、Working Weekはその中でも、クラブ向けの機能性だけに寄らず、歌と社会性を持ち込んでいた点が目立つ。IncognitoやLoose Ends、また広い意味ではStyle Council周辺のソウル/ジャズ志向とも接点があるが、Working Weekはよりラテン色と政治性が前に出ている。
当時の音楽誌では、英国ジャズの枠で捉えられがちだった彼らに対して、実際にはもっと幅広い音楽性があるという見方があった。『Compañeros』は、その認識を裏づけるような内容で、ソウル・バンドとしても、ジャズ・アンサンブルとしても読める作りになっている。
レーベルとオリジナル盤
UKオリジナル盤はVirginのV 2397。1986年当時のVirginは、1980年代後半に入る直前のグリーン/レッド系のレーベル・デザインが使われていた時期で、この盤もその時代のVirginらしい佇まいを持つ。のちの再発ではレーベル表記や体裁が変わることがあるが、作品自体は1986年のオリジナル・リリースとして聴くのが自然だろう。
まとめ
『Compañeros』は、Working Weekがジャズ、ソウル、ファンク、ラテンの要素を一つのバンド・サウンドにまとめたアルバムである。社会的なテーマを掲げながらも、演奏はあくまで実感のあるグルーヴに支えられていて、メッセージだけが先走らない。前作の延長線上にありつつ、よりバンドとしての輪郭が見える作品。英国の1980年代ジャズ・ソウルの流れを追ううえでも、外せない一枚である。
トラックリスト
- A1 Too Much Time 4:01
- A2 Dancing In Motion 4:09
- A3 Friend 4:43
- A4 South Africa 4:50
- A5 Shot In The Dark 5:17
- B1 Soul Train 4:44
- B2 King Of The Night 5:19
- B3 Touching Heaven 4:08
- B4 Southern Cross 7:54