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Annette Peacock(アネット・ピーコック)は、1941年にニューヨークのブルックリンで生まれたアメリカのシンガー/作曲家/作詞家/編曲家/プロデューサーだ。ロック、ジャズ、ファンク/ソウルの周辺をまたぎながら、フュージョン、ジャズ・ロック、アヴァンギャルドの文脈でも語られている。
4歳で作曲を始め、カリフォルニアで育った。音楽はほぼ独学で身につけたとされる。1960年にニューヨークへ移り、ジャズ・ベーシストのGary Peacockと結婚した。この時期には、ティモシー・リアリーらがいたミルブルックの共同体に関わり、Albert Aylerのヨーロッパ・ツアーにも同行している。
Peacockは、ジャズの現場にいながら電子音楽の初期実験にも早くから取り組んだ人物として知られている。Robert Moogから初期のMoogシンセサイザーの試作機を譲り受け、自分の声をシンセサイザーに通して加工する手法を試していた。こうした試みが、彼女を電子音楽のパイオニアとして位置づける要因になっている。
1969年11月には、ニューヨークのタウン・ホールで「Bley-Peacock Synthesizer Show」を開催し、翌月にはフィルハーモニック・ホールでも公演した。ここでは、ジャズの演奏、声の加工、シンセサイザーの使用が前面に出ている。
Gary Peacockと離婚した後は、ピアニストのPaul Bleyとパートナーになった。Bleyは彼女の作曲作品を多く録音している。二人の活動は、のちに「Bley-Peacock Synthesizer Show」としてもまとまっていく。
1972年1月にはRCAからソロ・デビュー作『I'm the One』を発表した。この作品では、ジャズ、ロック、ファンク、アヴァンギャルドが混ざった構成になっていて、加工した声を使う前衛的な作りが目立つ。後年になって再評価が進んだアルバムだ。
1978年にはセカンド・アルバム『X-Dreams』を発表した。ここにはMick Ronsonも参加している。同じ1978年、元Yes/King Crimsonのドラマー、Bill Brufordの初ソロ作『Feels Good to Me』にも、Alan Holdsworthらと並んでヴォーカルで参加している。
Peacockは、さまざまな前衛音楽家や実験的なミュージシャンと接点を持っている。情報として挙がっている相手には、Karlheinz Stockhausen、Evan Parker、Brian Enoがいる。ジャズの枠だけでなく、現代音楽や実験音楽の側にも活動が広がっていたことがわかる。
作品の多くは、自身のレーベルIronic Recordsから再発されている。2000年にはECMから『An Acrobat's Heart』を発表し、これは12年ぶりの新作として出ている。
Peacockの音楽でまず目に入るのは、声の扱い方だ。歌唱をそのまま前面に出すだけでなく、シンセサイザーを通して変化させる発想が早い段階からある。ジャズの即興性、ロックのバンド感、ファンクのリズム、アヴァンギャルドの実験性が、作品ごとに別々ではなく同じ場に置かれている。
また、作曲、作詞、編曲、プロデュースまで自分で担っている点も特徴だ。演奏家としてだけでなく、作品全体の設計に関わる立場で活動してきたことが、ディスコグラフィーの見え方にも反映されている。
ジャズの歴史の中でも、声と電子音の接点を早い時期から押し広げた人物として、Annette Peacockは見ておきたい存在だ。ロックやファンクの要素も含めながら、作品ごとに実験の比重が高いところが面白い。