Vinyl Record Reviews
Satisfactionは、1970年前後に活動したイギリスのジャズ・ロック/ブラス・ロック・バンドだ。中心人物は、1950年代末からジャズ・バンドやR&Bバンドを率いてきたトランペット奏者Mike Cotton。CottonはThe Mike Cotton Jazzmen、The Mike Cotton Band、The Mike Cotton Soundと名義を変えながら活動してきたが、サイケデリック・ロック以後の新しい流れを取り込む形でSatisfactionを立ち上げた。
結成は1970年。Mike Cottonに加えて、元ArtwoodsのDerek Griffiths、John Beecham、Lem Lubin、Nick Newell、Bernie Higginsonが集まった。編成を見ると、トランペット、トロンボーン、サックスを軸にしたホーン・セクションが前面に出ている。ChicagoやBlood, Sweat & Tearsのような、管楽器を使ったロックが注目を集めていた時期に、その流れの中で登場したバンドとして見ておくと分かりやすい。
Satisfactionの音は、ジャズの要素を土台にしながら、ロック、ソウル、ブルースの感触を重ねたものだ。特にホーン・アレンジが重要で、単なる装飾ではなく、曲の輪郭を作る役割を持っている。R&Bで鍛えた演奏感覚をベースにしているので、演奏は管楽器中心でも硬さだけに寄らず、ロック寄りの推進力も持っている。
プロフィール情報では、プログ・ロック、ジャズ・ロックの範囲に置かれている。実際、演奏の構成やアンサンブルの組み方は、当時のブラス・ロックや英国ジャズ・ロックの文脈で語られることが多い。
1970年、Deccaと契約し、David Hitchcockのプロデュースでアルバム『Satisfaction』を録音した。Hitchcockは後にCaravan、Camel、Genesisなどを手がけることになる人物で、この時点ではまだその後の評価が固まる前だった。
このアルバムは好意的に受け止められたが、商業的には大きく広がらなかった。Deccaはシングルも続けて発売している。
音楽誌からの反応は良かったものの、UKチャート入りは果たせなかった。バンドの活動期間自体も長くはなく、アルバムとシングルの発表からほどなくして解散している。
解散後、メンバーはそれぞれ英国ロックの現場で活動を続けた。Mike CottonとJohn Beechamは新たなMike Cotton Soundとして、The Kinksの『Muswell Hillbillies』以降の作品やライヴでホーン・セクションを担当し、CaravanやColin Blunstoneの作品にも関わっている。
Derek GriffithsはColin Blunstone、Argent、Keef Hartleyらと共演。Nick NewallはThe KinksやRoger Daltreyらと活動し、Lem LubinはChristieに加入した。短命だったバンドのわりに、メンバーの後年の仕事はかなり広い範囲に及んでいる。
2014年には、1971年から1972年にかけて録音されながら未発表だったセカンド・アルバム『Three Ages of Man』がAcid Jazz Recordsから発売された。これで、Satisfactionはオリジナル盤1枚だけのバンドではなく、もう1枚の録音を残していたことが明らかになった。
資料を追うと、Satisfactionは派手な成功を収めたバンドではないが、英国のジャズ・ロック史やブラス・ロックの流れの中では押さえておきたい存在だ。ホーン主体の編成、R&B出身の演奏陣、そしてデッカから出た唯一のアルバムと、後年発掘された未発表作まで含めて見ると、当時の英国ロックの動きがよく見えてくる。