Vinyl Record Reviews
Arawak(アラワク)は、イタリアの作曲家、編曲家、指揮者、ピアニストとして知られるベニート・シモンチーニの変名だ。1939年9月25日にピエディモンテ・マテーゼで生まれ、2011年11月8日にローマで亡くなっている。資料によってはルチアーノ・シモンチーニと表記されることもある。
この名義は主にライブラリー・ミュージックで使われた。放送や映像向けのバックグラウンド・ミュージックを多く手がけた人物で、ArawakのほかにもBenny Simons、Jason Black、Zuniなど複数の名義を使い分けていた。
シモンチーニは、イタリアの映画音楽やRAIなどのラジオ、テレビ向けの音源を数多く残している。Arawak名義は、その中でもライブラリー・ミュージック用の仕事で使われたものだ。
表に出るアーティスト活動というより、用途に応じた音源制作の現場で動いていた人物として見ると、Arawak名義の位置づけが分かりやすい。
Arawak名義の音源は、Jazz、Funk / Soulの文脈で語られることが多い。スタイルとしてはFunk、Easy Listening、Smooth Jazzが挙げられている。
代表作としてよく挙がるのが、1970年にSquirrel Recordsから出た『Accadde A...』だ。この作品では、ハーレム、ボストン、クスコ、バリ、バイーア、ベルファスト、リマといった都市名を冠した曲が並ぶ。曲ごとに、メロウなパートと、ドラム・ブレイクを前に出したファンキーなグルーヴが同居している。
同作は後年、レア・グルーヴやヒップホップのファンからも注目された。再発盤の紹介では、マッドリブがクァジモト名義でサンプリングしたことでも知られるとされている。再発はGolden PavilionとLight in the Atticの協力で、1,000枚限定で行われた。
『Accadde A...』(1970年、Squirrel Records)
「Background Music」シリーズなどのライブラリー作品
Arawakの音源を追うなら、まずはライブラリー・ミュージックとしての機能性と、演奏の中にあるグルーヴの両方を意識すると入りやすい。短い尺でも、ベースやドラムの動きがはっきりしている曲があり、そこにホーンや鍵盤が重なる構成が目立つ。
一方で、Easy ListeningやSmooth Jazz寄りの曲では、前に出すぎないアレンジが取られている。放送用、映像用の音源として作られているため、場面に合わせて使いやすい作りになっている。
Arawak名義は、イタリアのライブラリー・ミュージックの流れを知るうえで重要な名前のひとつだ。映画音楽、テレビ音楽、レア・グルーヴ、ヒップホップのサンプリング文化まで、いくつかの文脈が重なって見えてくる。
表立った作品数よりも、用途別に作られた音源の中に手応えのある演奏と編曲が残っている点が、この名義の面白さだ。Arawakをたどると、イタリアの映像音楽とライブラリー作品の広がりが見えてくる。