Vinyl Record Reviews
Billy Joel(ビリー・ジョエル、1949年5月9日生まれ)は、アメリカ・ニューヨーク州ブロンクス出身、ロングアイランド育ちのシンガーソングライター、ピアニスト。「ピアノ・マン(Piano Man)」の愛称で世界中から親しまれ、全世界で1億6000万枚以上のレコードセールスを記録したアメリカン・ポピュラー音楽の最高峰に君臨する巨匠である。
幼少期よりクラシック・ピアノの教育を受け、ビートルズに衝撃を受けてロックの道へ進んだジョエルは、1960年代にThe Echoes、The Hassles、そしてオルガン&ドラムのヘヴィ・サイケ・デュオであるAttilaといったグループで活動を重ねた。1971年に『Cold Spring Harbor』でソロ・デビューを果たすものの、劣悪な契約問題と商業的挫折に直面する。
失意のなかロサンゼルスへ渡り、偽名を使ってピアノ・バー「エグゼクティブ・ルーム」で弾き語りをしながら生計を立てていた実体験をもとに生まれたのが、1973年の歴史的名曲「Piano Man」であった。市井の人々の悲喜こもごもを温かく鮮やかに活写したこの曲が全米で大ヒットを記録し、彼のキャリアは劇的な好転を迎えた。
1970年代半ば、名プロデューサーのフィル・ラモーン(Phil Ramone)と出会ったことで、ビリーの音楽性は完璧な成熟を遂げた。
1977年に発表されたアルバム『ストレンジャー(The Stranger)』は、「Just the Way You Are(素顔のままで)」(第21回グラミー賞で最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を受賞)、「Movin' Out」、「She's Always a Woman」、「Scenes from an Italian Restaurant」、「Vienna」といった不朽のスタンダードを多数生み出し、全米で1000万枚を超えるダイヤモンド・ディスクに輝いた。
続く1978年の『ニューヨーク52番街(52nd Street)』では自身初の全米アルバムチャート1位を獲得し、第22回グラミー賞で「最優秀アルバム賞」を受賞。「My Life」「Honesty」「Big Shot」の大ヒットを生んだ本作は、1982年に世界初の商業用コンパクトディスク(CD)としてリリースされた歴史的記念碑としても名高い。
1980年代に入っても勢いは衰えず、ロックンロール宣言とも言える『Glass Houses』(1980年、「It's Still Rock and Roll to Me」全米1位)、自身の少年期のルーツであるドゥーワップやモータウン・ソウルへの深い愛を注ぎ込んだ傑作『An Innocent Man』(1983年、「Uptown Girl」「Tell Her About It」)、冷戦時代の世界史を怒涛のリリックで駆け抜けた『Storm Front』(1989年、「We Didn't Start the Fire」全米1位)など、時代ごとの音楽スタイルを自在に横断しながらヒットを連発した。
「New York State of Mind(ニューヨークの想い)」に象徴されるように、ビリー・ジョエルはニューヨークの哀歓と情熱を最も鮮やかに歌う象徴的アーティストとして君臨してきた。マンハッタンの殿堂マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)では、2014年より史上初のフランチャイズ・アーティストとして月1回の定期レジデンシー公演をスタートさせ、前人未到の100回連続ソールドアウトという前代未聞の記録を打ち立てた。
1992年にソングライターの殿堂、1999年にロックの殿堂入りを果たし、グラミー・レジェンド賞やガーシュウィン賞を受賞。卓越したメロディ・センスと鋭い観察眼、そしてダイナミックなピアノ・プレイで、半世紀以上にわたり世界中の人々の人生に寄り添い続けている。