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Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ、1942年8月7日 - )は、ブラジル・バイーア州サント・アマロ出身のシンガーソングライター、ギタリスト、詩人、プロデューサー、作家。1960年代末にブラジル文化を根底から揺るがした芸術運動「トロピカリズモ(トロピカリア)」の中心人物であり、半世紀以上にわたってブラジル現代音楽(MPB)の頂点に君臨し続ける、知性と革新性を兼ね備えた世界的巨匠である。
1960年代半ば、国民的歌手となる妹マリア・ベターニアの成功を機にリオデジャネイロへと進出。1967年にガル・コスタとの共作アルバム『Domingo』でデビューを飾った。繊細なボサノヴァの語法からスタートしたカエターノは、間もなく盟友ジルベルト・ジルらとともに、ブラジル伝統音楽に英米のロック、電子音楽、前衛詩、ポップ・アートを融合させる文化革命「トロピカリズモ」を宣言する。
1968年に発表された記念碑的オムニバス『Tropicália: ou Panis et Circencis』は、軍事独裁政権下の閉塞した社会に大きな衝撃を与えた。しかし、その急進的で自由奔放な表現は軍政の弾圧を招き、1969年にジルとともに投獄され、英国ロンドンへの亡命を余儀なくされた。
失意と孤独の中で過ごしたロンドン亡命期にも、カエターノは傑作『Caetano Veloso』(1971年)や、アフロ・ブラジリアンのリズムと英語詞が交錯する最高傑作の一つ『Transa』(1972年)を録音。1972年に待望の帰国を果たした。
帰国後は、過激な音響実験作『Araçá Azul』(1973年)、洗練されたアコースティックの極致『Qualquer Coisa』『Jóia』(1975年)、ナイジェリアFESTACでのアフロビート体験を反映し肉体とダンスの解放を歌った『Bicho』(1977年、「Odara」「Tigresa」「O Leãozinho」収録)、そして名盤『Cinema Transcendental』(1979年)と、歴史的傑作を怒涛の勢いで発表し続けた。
カエターノの音楽の神髄は、ジョアン・ジルベルト直系の静謐で知的なボサノヴァの美学を根底に持ちながら、ロックやファンク、ディスコ、レゲエ、アヴァンギャルド音楽を自在に呑み込み、独自の詩的世界へと昇華させる「文化の食人(アントロポファジア)」精神にある。
1980年代末にはニューヨークのアート・リンゼイをプロデューサーに迎え、『Estrangeiro』(1989年)や『Circuladô』(1991年)でノイズとサンバを融合させ世界的な絶賛を浴びた。さらに2000年代以降も、ペドロ・サら気鋭の若手ロック勢と組んだ『Cê』トリロジーや、近作『Meu Coco』(2021年)に至るまで、常に自らの過去を更新し、前衛性と大衆性を共存させながら世界の音楽シーンを刺激し続けている。