Vinyl Record Reviews
Chillyは、ドイツのプロデューサー兼ソングライター、ベルント・メールレが1978年夏にフランクフルトのEuropasoundスタジオ周辺で立ち上げたユーロ・ディスコ・プロジェクトだ。ジャンルの軸はElectronic、Rock、Funk / Soulで、スタイルとしてはDiscoに位置づけられている。メンバーにはBrad Howell、Ute Weber、Sofia Eyango、Werner Südhoff、Oscar Pearsonの名前が挙がっている。
Chillyは1978年から1983年までのあいだに5枚のアルバムを発表している。中心人物はベルント・メールレで、制作面を主導する形でプロジェクトを進めた。グループとしての活動期間は長くないが、デビュー作から注目を集めた。
特に最初のシングルとして知られる「For Your Love」は、ヤードバーズが1965年に発表した同名曲を土台にしたカバー作品だ。メールレが新しい歌詞や楽曲部分を大きく加え、11分を超えるディスコ組曲として作り直している。編曲にはクリスチャン・コロノヴィッツも参加している。
この「For Your Love」は、各国のディスコで支持を集めたとされている。アメリカではビルボードのDance Club Songsチャートに7週間入っており、1979年4月には38位を記録している。オリジナルのロック曲を長尺のディスコ作品に組み替えた点が、Chillyの出発点としてよく知られている。
Chillyの音楽は、ディスコを基盤にしながら、Electronic、Rock、Funk / Soulの要素を組み合わせた作りになっている。特に初期作では、バンド演奏の感触よりも、プロダクション主導の構成が前面に出ている。ボーカルを含めた各パートが、ダンス・ミュージックとしての流れを意識して配置されている点が特徴として挙げられる。
また、Chillyは単なるディスコ・ユニットとしてだけでなく、カバー曲の再構成を通じて存在感を出したグループでもある。既存曲をそのままなぞるのではなく、別の長さや形式に組み替えて提示したところに、このプロジェクトの作り方が表れている。
Chillyの男性ボーカルを担当したBrad Howellは、その後フランク・ファリアンに起用され、ミリ・ヴァニリの楽曲群で実際に歌唱を担当した声の一人として知られるようになる。のちにスキャンダルが発覚したあと、ファリアンは実際に歌っていた歌手を集めてThe Real Milli Vanilliを結成し、アルバム『The Moment of Truth』を1枚残している。
このためChillyは、ユーロ・ディスコのプロジェクトとして語られる一方で、「ミリ・ヴァニリ事件で実際に歌っていた声の主がいたグループ」としても取り上げられることがある。音楽史の中では、作品面と人名の両方から参照されるケースが多い。