Vinyl Record Reviews
Donovan(ドノヴァン、本名:Donovan Philips Leitch)は、1946年5月10日生まれのスコットランド・グラスゴー出身のシンガー・ソングライター/ギタリストだ。ジャンルはロック、ポップ、フォーク、ワールド系にまたがり、スタイルとしてはフォークとクラシック・ロックに位置づけられている。
1960年代の英国ポップやサイケデリック・フォークを語るうえで外せない存在で、2012年にロックの殿堂、2014年にソングライターの殿堂入りも果たしている。
1965年に「Catch the Wind」でデビューした当初は、アコースティック・ギターとハーモニカを軸にした弾き語りスタイルだった。初期は「英国のボブ・ディラン」と見なされることもあった。
その後、プロデューサーのミッキー・モストと組んだことで音作りが大きく変わる。フォークを土台にしながら、ジャズ、ブルース、東洋音楽、ロックの要素を取り込み、独自のサイケデリック・サウンドへ進んでいった。
1966年の『Sunshine Superman』は、ドノヴァンを代表する作品のひとつだ。タイトル曲は全米1位、全英2位を記録し、「Season of the Witch」も収録されている。ハープシコードやシタール、管弦楽器を使ったアレンジが目立ち、初期のサイケデリック・ポップの流れを示す作品として知られている。
続く『Mellow Yellow』(1967年)では、タイトル曲が全米2位のヒットになった。ポール・マッカートニーがコーラスと掛け声で参加している点でも知られる。
同じく1967年の『A Gift from a Flower to a Garden』は、ポップ寄りの曲とアコースティック中心の曲で構成された2枚組作品だ。ロック界でもかなり早い時期のボックス・セットのひとつとして扱われている。
1968年の「Hurdy Gurdy Man」では、重いファズ・ギターとタンブーラが前に出た、ややハードなサイケデリック・サウンドを聴かせる。ジミー・ペイジやジョン・ポール・ジョーンズがセッションに参加したことでも知られ、全米5位、全英4位を記録した。
ドノヴァンの特徴としてよく挙げられるのが、繊細で夢幻的な歌声と、詩的な歌詞だ。加えて、フォークのクローハンマーやトラヴィス・ピッキングをベースにしたギター・ワークも重要な要素になっている。
単なる弾き語りではなく、演奏の細かい運指まで含めて音楽性を作っているタイプで、後のフォーク系シンガーやアシッド・フォーク勢に影響を与えた背景にもつながっている。
ドノヴァンはビートルズとも深い関わりがあった。1968年初頭には、インド・リシケシュのマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのアシュラムにビートルズのメンバーと滞在している。
このとき、ジョン・レノンとポール・マッカートニーにアコースティック・ギターのスリーフィンガーやクローハンマー・ピッキングを伝えたとされている。こうした奏法は、『ホワイト・アルバム』収録の「Dear Prudence」「Julia」「Blackbird」などのギター・ワークに結びついたことで知られている。
また、「Yellow Submarine」の歌詞の一部をドノヴァンが提供したこともよく知られている。
ドノヴァンの影響は、1960年代の英国ポップにとどまらない。マーク・ボラン(T. Rex)をはじめ、ベル・アンド・セバスチャン、デヴェンドラ・バンハートなど、アシッド・フォークやフリー・フォークの系譜にあるアーティストたちにも影響を与えている。
フォークをベースにしながら、ロック、サイケデリア、東洋音楽まで取り込んだ姿勢は、当時のポップ・ミュージックの枠を広げる動きのひとつとして見られている。
ドノヴァンは、スコットランド出身のシンガー・ソングライターとして出発しながら、60年代のサイケデリック・ポップを代表する存在になった。初期のフォーク・スタイルから、録音作品ごとにサウンドを広げていった点が大きい。
活動歴、作品、ビートルズとの接点、そして後続世代への影響までを見ると、1960年代の英国音楽を追ううえで外せない人物だ。