Vinyl Record Reviews
Dr Space Mad Elf Messは、Øresund Space Collectiveの中心人物として知られるDr SpaceことScott Heller、Camper Van BeethovenやØSCで活動してきたJonathan Segel、そしてポルトガルのMadmessとIt Was The Elfのメンバーによるコラボレーション・プロジェクトだ。2024年1月、ポルトガル中部のスタジオ「Estúdio Paraíso nas Nuvens」に集まり、2日間の即興ジャムを行った記録がそのまま作品の土台になっている。
このセッションをまとめたアルバムが、セルフタイトルの『Dr Space Mad Elf Mess』だ。アートワークはDavid Grahamが担当している。
このプロジェクトの軸にいるのは、即興スペース・ロックを続けてきたDr Spaceと、マルチ奏者のJonathan Segelだ。そこに、ポルトガルの新世代サイケデリック/ストーナー・ロック・バンドであるMadmessとIt Was The Elfのメンバーが加わっている。
録音は事前の作曲をほとんど置かず、スタジオでの反応を頼りに進められた。綿密な作曲を行わず、スタジオで生まれたインスピレーションと即興演奏のダイナミズムをありのまま封じ込めている。
編成を見ると、ギターが複数本入り、そこに鍵盤系とシンセ、さらにドラムとベースが重なる形になっている。ライブ感の強い即興セッションに向いた布陣だ。
サウンドの出発点は、1970年代のクラウトロックやスペース・ロック、ヘヴィなサイケデリック・ロックにある。影響元としてはCan、Amon Düül II、Neu!、そしてHawkwind系の流れが挙げられる。
MadmessとIt Was The Elfのメンバーが担うのは、硬質で押しの強いリズムと、切り込むようなギターのやり取りだ。そこにDr Spaceのモジュラー・シンセのシーケンスやドローン、Jonathan Segelのフェンダー・ローズ、ヴァイオリン、メロトロンが重なっていく。
特にフェンダー・ローズの揺れ方や、メロトロンの層の作り方は、ロックのバンド編成に鍵盤の空気感を持ち込む役割を果たしている。ヴァイオリンも入るので、ギター中心のサイケデリック・ジャムに別の線が追加される構成になっている。
このプロジェクトは、セッション録音をDr SpaceとEdgarが整理して作品化したアルバムとして発表された。長尺の曲が中心で、20分を超える「The Mad Elves First Steps」も収録されている。
曲作りを先に固めるというより、演奏中の流れをそのまま展開させるタイプの内容だ。クラウトロックの反復、スペース・ロックの推進力、サイケデリック・ロックの即興性が、1曲の中で長く伸びていく。
Dr SpaceはØresund Space Collectiveで知られていて、そこで培われたスペース・ロックの即興的な手法がこのプロジェクトにもそのまま持ち込まれている。Jonathan Segelも、Camper Van BeethovenやØSCでの活動歴がある。つまり、この作品は単発の思いつきではなく、即興演奏を軸にした活動歴の延長線上にある。
一方で、ポルトガル側のMadmessとIt Was The Elfは、ヘヴィなサイケデリック/ストーナー・ロックの文脈を持っている。そこに北欧系のスペース・ロックと、アメリカ西海岸の実験性を持つプレイヤーが交わる形になっている。
Dr Space Mad Elf Messは、即興演奏を軸にしたスペース・ロックとヘヴィ・サイケデリアの交点にあるプロジェクトだ。メンバーの経歴と、スタジオでの2日間のセッションという成り立ちを踏まえると、完成された曲を聴くというより、演奏の流れそのものを追う作品として楽しみやすい。