Vinyl Record Reviews
Harold Melvin And The Blue Notes(ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ)は、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィア出身の伝説的ソウル/R&Bグループだ。洗練されたオーケストレーションと力強いグルーヴを武器に、1970年代のフィリー・ソウル(The Sound of Philadelphia)黄金期を牽引した名門グループとして知られている。
グループの母体は、1950年代半ばにフィラデルフィアで結成されたドゥーワップ・グループ「The Blue Notes」にさかのぼる。中心人物のハロルド・メルヴィンの名前を冠して「Harold Melvin And The Blue Notes」へ改称後も、クラブやライブハウスを中心に地道な活動を続けた。
1970年代初頭、ケネス・ギャンブルとレオン・ハフが率いる「フィラデルフィア・インターナショナル・レコード(PIR)」と契約したことで、一気にスターダムへ駆け上がった。ここでグループの顔となったのが、専属ドラマーからリード・シンガーへ抜擢されたテディ・ペンダーグラスだ。彼の情熱的で野太いバリトン・ボイスと、名門ハウスバンドMFSBによる華麗なオーケストレーションが見事に融合し、グループは黄金期を迎えた。
1972年に放った名バラード「If You Don't Know Me by Now」は、R&Bチャート1位、全米ポップチャート3位の大ヒットを記録(後に1989年にシンプリー・レッドがカバーし全米1位を獲得)。
さらに1973年の「The Love I Lost」では、MFSBのドラマーであるアール・ヤングによる4つ打ちのオープン・ハイハット・ビートを導入。これが後の「ディスコ・ビート」の原型を決定づける歴史的イノベーションとなり、全米R&Bチャート1位に輝いた。
1975年には、不況と格差社会を歌ったアップテンポの社会派ナンバー「Bad Luck」が全米ビルボードのディスコ・チャートで11週連続1位を記録した。
同年、女性シンガーのシャロン・ペイジを迎えた名盤『Wake Up Everybody』をリリース。表題曲「Wake Up Everybody」が大きな共感を呼んだほか、同作に収められた「Don't Leave Me This Way」は、後にテルマ・ヒューストンやコミュナーズによるカバーを経て世界的なディスコ・アンセムへと成長した。
1975年末から1976年にかけて、グループの看板となったテディ・ペンダーグラスがソロ転向のため脱退。その後、ハロルド・メルヴィンはデヴィッド・エボやジル・サンダースらをリードに迎え、ABCレコードへ移籍して「Reaching for the World」(1977年)などのヒットを放った。
ハロルド・メルヴィンは1997年、テディ・ペンダーグラスは2010年にそれぞれ逝去したが、彼らが残した芳醇なフィリー・ソウルと初期ディスコの名作群は、時代を超えて世界中の音楽ファンから愛され続けている。