Vinyl Record Reviews
James Carr(ジェームス・カー)は、1942年6月13日にミシシッピ州コアホマで生まれ、2001年1月7日にテネシー州メンフィスの療養施設で亡くなったR&B/ソウル・シンガーだ。メンフィスを拠点に活動し、特にサザン・ソウル/ディープ・ソウルの文脈で高く評価されている。
バプテスト派の説教者の家庭に育ち、幼いころから教会で歌っていた。ゴスペル・グループでの活動を経て、メンフィスの工場で働きながら歌っていたところを見出され、1960年代半ばにGoldwax Recordsと契約する。Goldwaxはメンフィスのインディ・レーベルで、カーにとってここが本格的な録音活動の出発点になった。
1966年に発表した「You Got My Mind Messed Up」がR&Bチャートでヒットし、まず名前を広めた。続く1967年の「The Dark End of the Street」は、ダン・ペンとチップス・モーマンが書いた曲で、彼の代表曲として知られている。後ろめたさを抱えた愛を題材にしたこの曲は、R&Bチャートでも上位に入り、その後も多くのアーティストにカヴァーされた。
1967年にはファースト・アルバム『You Got My Mind Messed Up』、1968年には『A Man Needs a Woman』を発表している。どちらもメンフィスのサザン・ソウルの流れをまとった作品として評価されている。Goldwax Recordsが1969年に活動を終えるまで録音を続けたが、その後は同じ水準の成功にはつながらなかった。
James Carrの歌は、ゴスペル由来の歌い方を土台にしながら、R&Bの流れにしっかり乗っている。声を強く押し出す場面が多く、フレーズの終わりまで感情を保ったまま歌い切るタイプだ。サザン・ソウルの中でも、特にメンフィス録音らしい乾いたバンド・サウンドと相性がよく、歌声が前に出る作りになっている。
彼は生涯を通じて双極性障害に苦しみ、それがキャリアにも影響した。活動が安定しない時期があり、録音や表舞台での展開は途切れがちだった。こうした事情もあって作品数は多くないが、残された録音は今もソウル・ミュージックの重要な遺産として扱われている。
「The Dark End of the Street」は、サザン・ソウルを代表する曲のひとつとして扱われている。アレサ・フランクリンやパーシー・スレッジなど、多くの歌手が取り上げてきたことからも、この曲の広がりがうかがえる。James Carr自身もディープ・ソウルの歌い手として高く評価されていて、アナログ盤を集めるリスナーやソウルファンの間で今も名前が挙がる存在だ。