Heaven 17 - Penthouse And Pavement (1981)
Heaven 17『Penthouse And Pavement』レビュー
Heaven 17のデビュー作『Penthouse And Pavement』は、1981年のUKヴァージン盤で登場したアルバムだ。ヒューマン・リーグを離れたマーティン・ウェアとイアン・クレイグ・マーシュが、制作集団B.E.F.の流れから立ち上げたプロジェクトで、そこにグレン・グレゴリーの歌声が加わっている。つまり、バンドというより、シンセポップの設計図を持った制作ユニットが、そのままアルバムという形になった作品だ。
この時期のUKエレクトロニック・ミュージックには、機械的な打ち込みだけで押し切るものもあれば、ダンス・ミュージックの感触を強めていく流れもあった。『Penthouse And Pavement』はその中間に位置する作品で、冷たい電子音だけでなく、ファンク寄りのグルーヴやソウル・ミュージックの感覚がしっかり入っている。ヒューマン・リーグの『Dare』と同時期に制作が進んだという背景もあり、シェフィールド発のシンセポップが別方向へ広がっていく局面を、そのまま記録したような内容になっている。
アルバムの骨格とサウンド
本作の大きな特徴は、A面とB面の構成そのものにある。A面は「Penthouse Side」、B面は「Pavement Side」と分けられ、タイトルが示す通り、上昇志向の都市感覚と、路上の現実感を対比させる作りになっている。ジャケットも、メンバーを実業家風に描いたイラストで、当時台頭していたヤッピー文化への皮肉が込められている。音だけでなく、作品全体で時代の空気を切り取っている印象が強い。
実際に耳を通すと、シンセの輪郭は明瞭だが、冷たさ一辺倒ではない。Linn LM-1の導入によるリズムの硬さに、ベースやギターが絡むことで、曲によってはかなりファンク寄りの推進力が出ている。特にB面では、シーケンスと生演奏の接点がはっきりしていて、単なるニュー・ウェイヴの範囲に収まらない。ウェアやマーシュが持ち込んだ構築性と、グレゴリーの歌が持つポップさが、うまく噛み合っている。
代表曲とアルバムの流れ
先行シングルの「(We Don't Need This) Fascist Groove Thang」は、このアルバムを語るうえで外せない。レーガン大統領を批判する歌詞が放送上の問題になり、BBC Radio 1で放送禁止となった曲として知られる。それでも全英シングル・チャートで40位台に入り、NMEの1981年年間トラックでも高く評価された。政治性のある言葉を、そのままダンス・ミュージックの形式に載せた点が、この曲の強さになっている。
続く「Play To Win」もシングルとして知られ、アルバム全体の入口を整えている。さらにB面終盤の「We’re Going To Live For A Very Long Time」は、レコードの針を上げるまで鳴り続けるロックド・グルーヴで終わる仕掛けがある。ラベル表記でも再生時間が無限大として扱われていて、アナログ盤ならではの遊び心が残っている。
制作背景と時代性
録音はシェフィールドのスタジオを中心に進められ、A面とB面で録音・ミックスの場所が分かれている。地元のセッション・ミュージシャン、ジョン・ウィルソンがベースとギターで参加し、特にPavement Sideの数曲で存在感を出している。バック・ボーカルにはジョジー・ジェイムスも加わり、機械だけでは出しにくい厚みを補っている。
このアルバムが面白いのは、シンセポップの文脈にありながら、後のハウスやエレクトロ・ファンクにもつながる感触を持っているところだ。デペッシュ・モードやソフト・セルのような同時代のUKエレクトロ勢と並べて聴くと、Heaven 17はより都市的で、しかもファンクの身体感覚を残している。のちのダンス・ポップやクラブ志向のエレクトロニック・ミュージックに通じる要素が、すでにこの時点でかなり揃っている。
評価と位置づけ
『Penthouse And Pavement』は、Heaven 17の出発点としてだけでなく、1981年のUKシンセポップがどこまで拡張できるかを示した作品としても重要だ。アルバムは全英14位まで上昇し、ロングセラーになった。NMEやメロディ・メイカーの当時の評価も高く、後年には定番アルバムとして扱われることが多い。タイトルの示す通り、上層と路上、ビジネスとダンス、皮肉と快楽が同居した一枚で、Heaven 17というユニットの方向性を最初に明確に打ち出した作品として記憶されている。
1981年のUKオリジナル盤は、Virginの当時の仕様らしく、歌詞入りの印刷インナー・スリーブ付きで出ている。音の作り込みだけでなく、アートワークやレコードとしての見せ方まで含めて、時代の空気がそのまま封じ込められたアルバムだ。
トラックリスト
- Pavement Side
- A1 (We Don't Need This) Fascist Groove Thang 4:17
- A2 Penthouse And Pavement 6:20
- A3 Play To Win 3:30
- A4 Soul Warfare 4:57
- Penthouse Side
- B1 Geisha Boys And Temple Girls 4:30
- B2 Let's All Make A Bomb 4:02
- B3 The Height Of The Fighting 3:00
- B4 Song With No Name 3:33
- B5 We're Going To Live For A Very Long Time
動画プレイリスト
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[We Don't Need This] Fascist Groove Thang
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Penthouse And Pavement (Remastered 2006)
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Play To Win (Remastered)
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Soul Warfare (2006 Digital Remaster)
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Geisha Boys And Temple Girls (2006 Digital Remaster)
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Let's All Make A Bomb (2006 Digital Remaster)
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The Height Of The Fighting (Remastered 2006)
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Song With No Name (2006 Digital Remaster)
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We're Going To Live For A Very Long Time (2006 Digital Remaster)