Vinyl Record Reviews
Ike Turner's Kings Of Rhythmは、アイク・ターナーを中心に結成されたFunk / Soul系のグループで、のちにロックンロール史やR&B史の中でも重要な存在として扱われるバンドだ。出発点は1940年代末のミシシッピ州クラークスデイルで、前身となる「ザ・トップハッターズ」を母体に「Kings of Rhythm」として動き始めた。
関連サイトの情報や公開されている記録を見ると、このバンドは単なる伴奏役ではなく、アイク・ターナーのバンド運営、録音、タレント発掘まで含めた活動の中心にあった。メンバーにはSoko Richardson、Jesse Knight、Kevin Cooper、Leon Blue、Mack Johnson、Audrey Madison、Billy Emerson、Raymond Hill、Ernest Lane、Bonnie Turner、Eddie Jones、Willie Kizart、Paul Smith、Bill Ray、Seth Blumberg、Jeorge Taylor、Michael Williams、John “Bootie Lip” Wings、Eugene Washingtonらが並ぶ。
このバンドを語るうえで外せないのが、1951年3月にメンフィス・レコーディング・サービスで録音された「Rocket 88」だ。録音時の移動中にアンプが車から落ちてスピーカーコーンが破れ、その結果としてウィリー・キザートのギターに歪みが生まれた、というエピソードがよく知られている。そこにブギウギ・ピアノが重なり、勢いのあるR&Bとして形になった。
この曲は「ジャッキー・ブレンストン&ヒズ・デルタ・キャッツ」名義で出され、R&Bチャート1位を記録した。ロック史では「史上最初のロックンロール・レコード」の候補としてたびたび挙げられる。Kings Of Rhythmの名前そのものより、この録音の中身と影響の大きさで知られる場面だ。
1954年にはイースト・セントルイスとセントルイスへ拠点を移した。ここでKings Of Rhythmは、アイク・ターナーの厳しいバンド・コントロールのもと、かなり締まった演奏をするライヴ・バンドとして評価を高めていく。中西部のR&Bシーンでは、強いグルーヴを持つバンドとして知られるようになった。
アイクは演奏だけでなく、ModernやChessといったレーベルでのスカウトやセッション・ミュージシャンとしても動いていた。ハウリン・ウルフやエルモア・ジェームスの録音を支えたことも記録に残っている。バンドの外側でも黒人音楽の現場に深く関わっていたわけだ。
この時期、セントルイスのクラブ・マンハッタンでアンナ・メイ・ブロック、のちのティナ・ターナーを見出してバンドに迎え入れた。Kings Of Rhythmは、その後のアイク&ティナ・ターナー・レヴューの土台にもなっていく。
1960年の「A Fool in Love」のヒットをきっかけにアイク&ティナ・ターナー・レヴューが始動すると、Kings Of Rhythmはそのステージを支える専属バック・バンドとして機能した。ここでは、演奏の正確さと音量、そして観客を引っ張る推進力が重要だったように見える。
「River Deep – Mountain High」や「Proud Mary」のようなヒット曲の現場でも、Kings Of Rhythmの演奏力が前提にあった。アリーナやフェスティバル規模のステージを回るなかで、バンドはアイクとティナのショーを成立させる実働部隊だった。
Kings Of Rhythmは、単に歌の伴奏をするだけのバンドではなかった。単独名義でもインストゥルメンタルやインスト・ファンクのシングルを多数録音している。ここでは、泥臭く強いリズム隊と、ホーン・セクションの切れ味が特徴として挙げられる。
ファンクやレアグルーヴの文脈でこのグループが参照されるのは、その演奏がビート中心で、リフやグルーヴの反復に強みがあるからだ。派手な装飾より、リズムの圧で押していくタイプのバンドとして見られている。
ティナとの離婚や長い活動休止を経た2000年代、アイク・ターナーは新世代のミュージシャンたちとKings Of Rhythmを再結成した。2001年の復帰作『Here and Now』はグラミー賞にノミネートされ、2006年の『Risin' with the Blues』では第49回グラミー賞の「最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞」を受賞している。
この時期の活動を見ると、Kings Of Rhythmは過去の再演にとどまらず、ブルースやR&Bの系譜をそのまま持ち込むバンドとして機能していたことがわかる。ロックンロールの初期からファンク、ブルースまで、アイク・ターナーの音楽活動を支える器として長く続いた。
Kings Of Rhythmは、「Rocket 88」の録音によってロックンロール史の初期に名前が出てくる一方で、セントルイス期以降はR&Bバンドとしての実力でも存在感を持った。さらに、アイク&ティナ・ターナー・レヴューのバック・バンドとして大規模なツアーを支え、晩年にはブルース作品でも評価を受けている。
ひとつのジャンルに収まりきらず、時代ごとに役割を変えながら活動してきたバンドとして見ると、その履歴はかなり長い。黒人音楽の現場で、録音、ライヴ、発掘、ツアーのすべてに関わったグループとして記録されている。