Vinyl Record Reviews
Les Baxter(レス・バクスター、1922年3月14日 - 1996年1月15日)は、アメリカ・テキサス州出身の作曲家、アレンジャー、指揮者、バンドリーダーである。エキゾチカ(Exotica)音楽の先駆者の一人として広く知られ、オーケストラ・ポップ、ラウンジ、スペース・エイジ・ポップから映画音楽まで膨大な数の録音を手がけた。
幼少期よりピアノの才能を示し、クラシックの基礎教育を受けた。デトロイト音楽院やペパーダイン大学でピアノと作曲を学び、1940年代半ばにはメル・トーメ率いるコーラス・グループ「ザ・メル・トーンズ(The Mel-Tones)」のメンバーとして歌唱・録音に参加した。その後、アーティ・ショウ楽団などのビッグバンドでも活動し、NBCのボブ・ホープやアボット&コステロらの人気ラジオ番組でアレンジャーや指揮者を務め、作編曲家としての腕を磨いた。
1950年にキャピトル・レコードと契約し、コンポーザー/アレンジャーとして本格的なソロ活動を開始する。1951年に発表したアルバム『Ritual of the Savage(野蛮の儀礼)』は、ハリウッド映画音楽譲りのダイナミックなフルオーケストラに、ポリネシア、アフリカ、南米のパーカッションや鳥の鳴き声・環境音を取り入れた画期的な作品となった。本作に収録された「Quiet Village」は、後にマーティン・デニーによるカバーが全米大ヒットしたことでも知られ、バクスターはエキゾチカ・サウンドの創始者としての地位を確立した。
バクスターの手腕はエキゾチカにとどまらず、メインストリームのポップ・オーケストラとしても全米チャートを席巻した。1955年に発表した「Unchained Melody」はビルボードのポップ・チャートで全米1位を記録。翌1956年の「The Poor People of Paris(パリの貧しき人々)」も連続して全米1位を獲得した。また、ナット・キング・コールやフランク・シナトラ、ペルー出身の奇跡の歌姫イマ・スマックらのアレンジやオーケストラ伴奏も担当し、キャピトル・レコードの看板アレンジャーとして活躍した。
1960年代以降は映画音楽の分野に軸足を移し、アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ(AIP)製作の映画を中心に150本以上の劇伴を手がけた。ロジャー・コーマン監督によるエドガー・アラン・ポー原作のホラー映画『アッシャー家の惨劇』(1960年)や『恐怖の振子』(1961年)のスコアは特に名高い。さらに『ビーチ・ブランケット・ビンゴ』をはじめとする一連のビーチ・ムービーや、バイカー映画『Hell's Belles』(1969年)、『狂乱の叫び(The Dunwich Horror)』(1970年)などでは、ヘヴィなブラスやファズ・ギター、サイケデリックなファンク/ロックの要素を大胆に取り入れたグルーヴィーなサウンドを生み出した。
壮麗なストリングスとハリウッド仕込みのオーケストレーションを土台にしつつ、多彩なパーカッションや民族楽器、エキゾチックな旋律を緻密に織り交ぜるサウンドメイクがレス・バクスターの真骨頂である。1990年代に巻き起こったラウンジ・ミュージック、モンド・ミュージック、スペース・エイジ・ポップの世界的リバイバルブームにおいてその功績は再評価され、サンプリング・ソースとしてもクラブ・カルチャーや次世代のクリエイターに多大なインスピレーションを与え続けている。