Vinyl Record Reviews
Livy Ekemezie(リヴィ・エケメジー)は、ナイジェリア出身のミュージシャン/シンガー。1983年にプライベート・レーベルからリリースした唯一の自主制作アルバム『Friday Night』が、80年代アフリカン・ブギー/ディスコにおける「究極の聖杯(ホーリー・グレイル)」として世界中のレコード・ディガーやDJの間で神格化されているカルト・アーティストである。
当時の西欧最先端のエレクトロ・ファンクやブギーを貪欲に吸収し、ナイジェリア特有の瑞々しいメロディ感覚と融合させたそのサウンドは、発掘以降世界中のダンスフロアを熱狂させ続けている。
当時まだ学生だったエケメジーは、自らの音楽を形にするため、友人やクラスメイトたちから少しずつ借金を重ねてスタジオ代を工面した。録音の舞台となったのは、伝説のプロデューサーであるオディオン・イルオジェ(Odion Iruoje)らが数々の名盤を生み出したナイジェリア屈指の名門、ラゴスのEMIスタジオであった。
そうして完成したアルバム『Friday Night』は、1983年に自身のプライベート・レーベル「Linic Major Production」から発売された。しかしプロモーションの資金も流通ルートも限られていたためプレス数はごく僅かにとどまり、地元ナイジェリアでもヒットすることなく長きにわたり完全に忘れ去られた存在となっていた。
しかしレコードに刻まれた音楽性は、驚くべき輝きを放っていた。うねるようなスラップ調のシンセ・ベースと小気味よいカッティング・ギター、そして80s初頭の雰囲気を色濃く伝えるドラムマシンとキーボードのアンサンブルは、当時のニューヨークやロンドンのクラブ・サウンドにも引けを取らない洗練を誇る。
そこにエケメジーのどこか人懐っこく素朴なヴォーカルと、ローカル感あふれるコーラス・ワークが重なることで、単なる西洋ブギーの模倣ではない独特の浮遊感と祝祭的なグルーヴが誕生。ダンサーを直撃するキラーなタイトルトラック「Friday Night」や「Get It Down」、リゾート感漂う「Holiday Action」など、全編にわたって極めてクオリティの高い楽曲が揃っている。
2010年代に入り、アフロ・ファンクやトロピカル・ディスコの再評価の波が世界的に高まる中、本作のオリジナル盤はコレクターズ・市場で数千ドルの値がつく幻のウルトラ・レア盤として知れ渡るようになった。
2017年、ナイジェリアのヴィンテージ音源復刻レーベル「オディオン・リヴィングストン(Odion Livingstone)」が、設立記念の第一弾タイトルとして本作のオフィシャル再発プロジェクトを敢行。正規リマスターLPおよびCDとして世界中に流通したことで、一躍クラブ・クラシックとしての地位を不動のものとした。情熱だけで名門スタジオに飛び込んだ若き青年のレコードは、30年以上の時を経て世界中のフロアを揺らすアンセムとなっている。