Vinyl Record Reviews
Stark Realityは、1969年にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで結成されたジャズ・ロック・バンドだ。活動期間はおよそ1年と短い。メンバーは、Monty Stark(ヴィブラフォン)、Carl Atkins(サックス)、John Abercrombie(ギター)、Phil Morrison(ベース)、Vinnie Johnson(ドラムス)で構成されていた。
このバンドの出発点には、作曲家Hoagy Carmichaelの息子、Hoagy Bix Carmichaelの企画がある。彼はボストンの公共テレビ局WGBHで働いており、父の楽曲を使った子ども向け番組「Hoagy Carmichael's Music Shop」を準備していた。その制作のために、Monty Starkへ1958年の子ども向けアルバムの楽曲を子ども向け番組に合う形へ作り替えるよう依頼した。
Stark Realityは、この素材をそのまま演奏するのではなく、即興を強く押し出した形で組み替えた。ウェブ上の情報では、サイケデリック・ロックとビバップ・ジャズを混ぜた作りに触れられている。ジャンル表記としては、Jazz、Funk / Soul、Stage & Screen、スタイルとしてはFusion、Jazz-Rock、Jazz-Funk、Soul-Jazzが挙がっている。
1970年、AJP Recordsから2枚組アルバム「The Stark Reality Discovers Hoagy Carmichael's Music Shop」が発表された。ピアニストAhmad Jamalが所有するレーベルからのリリースで、子ども向けの歌を素材にした異色のジャズ・ロック作品として扱われている。
なお、プロフィール情報ではCarl Atkinsが最終的な録音には参加していないとされている。バンドの編成としては紹介されることが多いが、実際の録音参加は別に整理しておく必要がある。
Stark Realityの音楽は、元の子ども向け楽曲を土台にしながら、自由度の高い即興で組み替えている点が特徴だ。ヴィブラフォンを中心に、サックス、ギター、ベース、ドラムスが加わり、ジャズの演奏感とロック寄りの推進力が同時に出ている。
Monty Starkのエレクトリック・ヴィブラフォンは、このバンドの輪郭を決める要素として見られている。John Abercrombieのギターも重要で、その後の活動を考えると、ここでの演奏は彼の初期キャリアの一部としても押さえておきたい。
バンドは地元での演奏で客入りに苦しみ、カリフォルニアへのツアーも成果が出なかったため、ほどなく解散した。活動期間の短さに対して、残した録音の存在感は後年になって強まっていく。
2002年にStones Throwのコンピレーション「Jukebox 45's」に1曲が収録されたことをきっかけに、再評価が進んだ。2003年には傘下のNow-Againから再発盤「Now」が出ている。その後も再発が続き、オリジナル盤はコレクターやリスナーの間で参照される作品になっていった。
Stark Realityは、ヒップホップのプロデューサーからの評価が特に高い。Pete Rockが重宝したほか、Large Professor、Madlib、J-Live、The Black Eyed Peasらにサンプリングされている。もともとの演奏にあるフレーズの切り出しやすさ、リズムの置き方、音の抜け方が、サンプリング素材として使われやすかったのだろう。
Now-Againは、Bernie Grundmanによるマスター・テープからのオール・アナログ・カッティングでオリジナル・アルバムの決定版も再発している。こうした再発の流れもあって、短命なバンドながら現在まで名前が残っている。
メンバーのJohn Abercrombieは、その後ジャズ・フュージョンの分野で活動を広げ、1974年以降は40作を超えるリーダー作を残している。Stark Realityは、彼のキャリアをたどるうえでも初期の記録として確認しやすいバンドだ。