Vinyl Record Reviews
Tryad(トライアッド)は、1970年代初頭にアメリカ・ニューヨークで結成された男女3人組のフォーク・ロック/アシッド・フォーク・トリオだ。メンバーはジム・ラスコ(Jim Lasko)、ジェシー・ランジロッティ(Jesse Lanzillotti)、ノリーン・ライオンズ(Norine Lyons)の3人で、ジムがアコースティック・ギター、リード・ヴォーカル、ソングライティングを担い、ジェシーがリード・ギターとバッキング・ヴォーカル、ノリーンがヴォーカルを担当していた。
Tryadは1972年に、ニューヨークの自主レーベルStorm King Recordsから唯一のアルバム『...If Only You Believe in Lovin'』をプライベート・プレスで発表している。一部資料では1971年表記も見られるが、このアルバムが彼らの中心的かつ唯一の公式なリリース作である。
本作はプレス枚数が非常に少なく、長年コレクター向けの秘宝盤として扱われてきた。後年にはDel Valレーベルなどから正規再発され、プライベート・フォークやアシッド・フォークの文脈で改めて広く聴かれるようになった。
Tryadの音楽は、アコースティック・ギターを軸にしたフォークを基本にしている。そこへ、西海岸のカントリー・ロックに通じるペダル・スティール・ギターや、フルート、ラーガ調の展開を含むアシッド・フォーク/サイケデリック・ロックの要素が溶け合っている。
楽曲ごとに見ると、「Columbia Tavern」や「Something Sweet In Dying」、「Eulogy Raga」などでその方向性がはっきり表れている。ノリーン・ライオンズの涼やかでアンニュイな歌声と男女混声ハーモニーが合わさることで、楽曲全体に静謐な哀愁と独特の浮遊感が生まれている。
唯一のアルバム『...If Only You Believe in Lovin'』は、端正なメロディーのフォーク曲と、実験的な展開を持つ曲が並ぶ作品だ。アコースティック主体の編成でありながら、カントリー・ロック寄りのアレンジやアシッド・フォークらしい構成が組み込まれており、単なるシンガーソングライター作品とは一線を画すまとまりを見せている。
自主制作盤としてリリースされたこともあり、当時の商業的な広がりは大きくなかったが、そのぶん1970年代初頭のアメリカン・フォークのプライベートな側面を鮮明に残している。
Tryadは、1970年代初頭のアメリカで生まれた自主制作フォーク/サイケデリック作品の代表例のひとつとして位置づけられている。チャートを賑わすような商業的成功とは無縁だったものの、唯一のアルバムが後年まで掘り起こされ続けたことから、コレクターやフォーク・ロック愛好家の間では重要作として扱われている。
派手さはないが、フォーク、カントリー・ロック、アシッド・フォークの要素をひとつのアルバムに美しくまとめあげた点において、当時のニューヨークのインディペンデントな空気を色濃く残したグループだ。