Vinyl Record Reviews
Vanilla Fudge(ヴァニラ・ファッジ)は、アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランドで1966年に結成された伝説的ロック・バンドだ。活動初期はマーク・スタイン(ボーカル、オルガン)、ヴァンス・マーテル(ギター)、ティム・ボガート(ベース)、カーマイン・アピス(ドラムス)の4人編成でスタートした。
サイケデリック・ロックの枠組みに留まらず、重厚なオルガン・サウンドと圧倒的な大音量のヘヴィ・リズムセクションを前面に打ち出し、のちのハードロックやヘヴィメタル(プロト・メタル)への決定的な橋渡しを果たした先駆者として知られる。
前身バンドThe Pigeonsを経て結成されたVanilla Fudgeは、1967年にAtcoからデビュー・アルバム『Vanilla Fudge』を発表し、全米チャート6位を記録した。ここで大きな注目を集めたのが、既存のポップスやR&B、モータウンの楽曲を極端にスローテンポ化し、ドラマティックかつ重厚に再構築する斬新な手法だった。
特にスプリームスの「You Keep Me Hangin' On」のカバーは全米シングルチャート6位の大ヒットを記録。原曲のメロディを活かしつつ、轟くハモンド・オルガンと強烈なドラム、うねるベースで壮大なサイケデリック・ロックへと昇華させた演奏は、ロック史に残る名演となった。
Vanilla Fudgeのサウンドの核にあるのは、ハモンド・オルガンを中心にした音作りだ。マーク・スタインのオルガンが前面に出て、ギター、ベース、ドラムが分厚く支える。テンポを大幅に落とすことで生まれた演奏のヘヴィネスと壮大な展開は、既存のポップソングを別の重心を持つロック曲へと再定義する革命的なものだった。
Vanilla Fudgeは、同時代や後続のロック・バンドに絶大な影響を与えた。初期のDeep Purpleは彼らのオルガン主導のヘヴィ・サウンドを明確に意識して結成され、Led Zeppelinも初のアメリカ・ツアーでVanilla Fudgeの前座を務め、その圧倒的な音圧と演奏から大きな刺激を受けた。
1970年に一度解散した後、リズム隊のティム・ボガートとカーマイン・アピスはハードロック・バンドCactusを結成。さらにジェフ・ベックとともに伝説のトリオBeck, Bogert & Appice(BBA)を結成し、ロック界の第一線で活躍を続けた。Vanilla Fudge自体もその後再結成を重ねており、サイケデリックからハードロック/ヘヴィメタルへの歴史的転換点に立つ重要バンドとして永遠のリスペクトを集めている。