Vinyl Record Reviews
Writing On The Wall(ライティング・オン・ザ・ウォール)は、スコットランドのエディンバラで結成されたロック・バンドだ。活動期間は1967年から1973年まで。ヘヴィ・サイケデリック、初期ハード・ロック、プログレッシヴ・ロックの黎明期を代表するグループのひとつとして位置づけられている。
もともとはThe Juryという名前で活動していたが、1968年初頭にWriting On The Wallへ改名。マネージャーのブライアン・ウォルドマン(Brian Waldman)の手引きでロンドンへ進出し、彼が運営していた伝説的なクラブMiddle Earth Clubのレジデント・バンドとして熱狂的な支持を集めた。
ロンドン進出後は、当時のアンダーグラウンド・シーンで頭角を現した。BBCラジオでDJジョン・ピール(John Peel)のセッションを行い、ライブ・デモ音源も制作。イギリスのアンダーグラウンド・ロックの最前線で活動を展開した。
1970年代に入ってからもスコットランドやウェールズで録音を試みながら活動を継続したが、1973年12月に機材一式を盗難される災難に見舞われ、そのまま解散に至った。
主なメンバーは、リード・ヴォーカルのLinnie Paterson(リニー・パターソン)、ギターのWilly Finlayson(ウィリー・フィンレイソン)、キーボード/オルガンのBill Scott(ビリー・スコット)、ベースのJake Scott(ジェイク・スコット)、ドラムのJimmy Hush(ジミー・ハッシュ)らを中心としていた。その他にもRobert "Smiggy" SmithやAlan Greenhalghらが在籍した。
Writing On The Wallのサウンドは、重厚に唸るハモンド・オルガンの比重が高く、そこへファズを効かせた攻撃的なギターとタイトなリズム隊が重なる。Linnie Patersonのヴォーカルは野太くしゃがれた咆哮スタイルで、楽曲のダークで荒々しい印象を決定づけている。
楽曲面では、サイケデリック・ロックの浮遊感に加えてハード・ロックの重量感と推進力があり、さらに初期プログレッシヴ・ロック的な複雑な展開も兼ね備えていた。オカルトや怪奇趣味を漂わせる陰鬱な世界観も特徴で、「Bogeyman」や「Shadow of Man」、シングル曲「Lucifer Corpus」などにその個性が色濃く表れている。
1969年には、Middle Earthレーベルから唯一の公式スタジオ・アルバム『The Power of the Picts』(邦題:ピクト族の力)を発表した。
このアルバムでは、オルガンとギターが前面に出たヘヴィなサウンドが全編を覆い、当時のアンダーグラウンド・ロックらしい緊張感と禍々しさに満ちている。ヘヴィ・サイケと初期ハード・ロックの歴史的接点を示す名盤として高く評価されている。
Writing On The Wallは、ロンドンのカウンターカルチャーやアンダーグラウンド・シーンに深く根ざしたバンドだった。Middle Earth Clubでのライブやジョン・ピール・セッションへの出演は、彼らが当時の英国ロックの熱気の中枢にいたことを物語っている。
公式アルバムが1枚のみという希少性も相まって、現在でもブリティッシュ/スコティッシュ・ロック史を代表するアングラ・ヘヴィ・ロックの伝説的バンドとして、世界中のコレクターやロックファンから高く評価され続けている。