Writing On The Wall - The Power Of The Picts (1969)
Writing On The Wall『The Power Of The Picts』
エディンバラ出身のWriting On The Wallが残した唯一のスタジオ作が、『The Power Of The Picts』。もともとはThe Jury名義で活動していたバンドで、1968年にマネージャーのBrian Waldmanがロンドンへ移し、自身のクラブMiddle Earthで演奏の場を与えたことが、この作品の前提になっている。1968年末にはJohn PeelのBBCラジオ・セッションとライヴ・デモも残しており、その流れの先で、Waldmanが立ち上げたMiddle Earthレーベルから1969年にこのアルバムが出た。
制作背景とエピソード
録音時の編成は、初期メンバーから少し変動があったとされる。アルバムは、当時のライヴの迫力をスタジオに持ち込もうとした作品として語られている。制作の中心にあったのは、バンドの舞台的な振る舞いと、ロンドンのMiddle EarthやMarqueeでの活動で培った演奏の感触だった。さらにTen Years Afterとのツアーや長期レジデンシーもあり、そうした現場での経験がこの1枚に結びついている。
収録曲のうち「A4」はクレジット上では「Composer Unknown」とされているが、実際には「Aries - The Fire-Fighter」のカヴァーと記されている。こうした細部も含めて、録音物としての履歴が少し複雑な作品でもある。
時代の文脈
1969年の英国では、サイケデリックの余韻から、より重く、陰鬱で、劇場性の強いロックが前に出ていた。本作はその流れの中で、The Doors、Procol Harum、Trafficと比較されることがある。ただし、AllMusicのRichie Unterbergerは、オルガンとギターの絡みをそうしたバンドに重ねつつ、より「sour and ominous」なムードがあると評している。
Middle Earthレーベルは1969年10月末に始動しており、Writing On The Wallはその看板のひとつだった。エディンバラからロンドンへ移り、アンダーグラウンドの現場で活動したバンドの足跡が、そのまま作品の位置づけにつながっている。商業的には大きな成功はなく、研究論文では売上が芳しくなかったとされているが、作品そのものは当時の初期ヘヴィ・プログレの文脈で扱われている。
後世への再評価
直接的な大ヒットや広範なカヴァーの情報は見当たらない一方で、2000年代以降は再発盤やアーカイヴ音源の整理が進み、英国のアンダーグラウンド/ヘヴィ・プログレの流れで語られる機会が増えている。AllMusicでは、十分に独創的ではないという見方も示されつつ、重厚で劇的な雰囲気が評価の対象になっている。Mid 80sの再発盤はHungaroton製造とされ、オリジナル盤とは別の流通史を持つ1枚としても扱われている。
『The Power Of The Picts』は、Writing On The Wallの活動の中心にありながら、ライヴ・シーン、レーベルの立ち上がり、当時のロンドンのアンダーグラウンド環境が重なって生まれた作品として残っている。
トラックリスト
- A1 It Came On A Sunday 4:10
- A2 Mrs. Cooper's Pie 4:50
- A3 Ladybird 4:48
- A4 Aries 6:02
- B1 Bogeyman 3:10
- B2 Shadow Of Man 6:30
- B3 Taskers Successor 3:35
- B4 Hill Of Dreams 3:10
- B5 Virginia Waters 5:50