Animal Collective - Sung Tongs (2004)
Animal Collective 2004

Animal Collective - Sung Tongs (2004)

Electronic Folk, World, & Country Experimental Abstract

Animal Collective『Sung Tongs』(2004)レビュー

Animal Collectiveの『Sung Tongs』は、2004年にFatCat Recordsから発表された作品で、バンドの初期ディスコグラフィーの中でも大きな転機として位置づけられるアルバムだ。アーティスト表記はAnimal Collectiveだが、中心になっているのはAvey TareことDavid PortnerとPanda BearことNoah Lennoxの2人で、そこにJosh Dibb、Brian Weitzらの感覚が重なる。もともと前衛的な実験性で知られてきたグループだが、この作品ではアコースティック・ギターと声の重なりが前面に出ていて、従来のノイズ寄りの印象よりも、曲そのものの輪郭が見えやすい。

制作の背景とサウンドの特徴

録音はコロラド州ラマーのHadesで、2003年9月7日から28日にかけて行われた。ミックスはRusty “Saphire” Santos、Panda Bear、Avey Tareによって2004年1月にGreen Leaf Houseでまとめられている。クレジット上も比較的はっきりしていて、ここでは「歌」と「演奏」の存在感が強い。タイトル曲の説明文にあるように、アルバム全体は“古い家に戻ること”“友人と何もしないこと”“骨で音を出すこと”といった、かなり具体的なイメージで捉えられている。実際に聴くと、そうした言葉どおり、生活の断片や手触りのある音がそのまま組み合わさっている印象がある。

聴感上の核になるのは、アコースティック・ギターの反復と、声の層だ。きっちりしたロックのリズムというより、弾き語りの断片がずれて重なっていくような作りで、そこに口ずさみ、掛け声、鳥の鳴き声のような音が差し込まれる。『Leaf House』のような曲は、その代表格と言えそうだ。メロディは親しみやすいが、並び方は整いきらず、音の一つひとつが少しずつずれている。そのため、フォークの形式に寄りながらも、単純なフォーク・ロックには収まらない。

作品としての位置づけ

Animal Collectiveにとって『Sung Tongs』は、初期の実験性を保ったまま、より多くのリスナーに届く形へ接近したアルバムとして見られている。前作までの流れを知っていると、ここでの変化はわかりやすい。音の密度や奇妙さを残しつつも、曲の単位で耳に入りやすい。後年のインタビューや回顧でも、この時期が「歌うこと」そのものを試しながら方向を定めていった段階として語られているのは自然だろう。

批評面でも評価は高く、Metacriticでは83点台で非常に好意的な扱いを受けた。雑音を積み上げるというより、偶然に生まれるズレや再会のような感覚を曲にしている、という見方もされている。実際、このアルバムは単に奇抜なだけではなく、反復の中でフレーズが少しずつ形を変えるため、聴いている側が構造をつかみやすい。そういう意味では、当時のインディー・フォークや実験ポップの流れの中でも、かなり早い段階で輪郭を示した一枚だったと思える。

盤の仕様とオリジナル盤の情報

このレコードはFatCat RecordsのSplinter Seriesに含まれ、USA、Canada、UKで流通した。マットなゲートフォールド・スリーブ仕様で、背面にはBrightonの住所表記が入る。コピーによってはバーコード・ステッカー付きのものもある。クレジットには「All songs © 2004」「℗ FatCat Records Ltd 2004」「Made in England」とあり、作品としては2004年の発表時点の空気をそのまま持っている。収録時間の表記がない点も、当時のインディー系リリースらしい素朴さとして残る。

なお、盤の年も作品の年も2004年で、オリジナル盤として扱える。再発盤との違いを比べる対象ではなく、この盤そのものが初出の形だ。アートワークやパッケージも含めて、音の作りと同じく、過度に整えすぎない方針が全体に通っている。

収録曲と聴きどころ

この作品には、のちにバンドの代表曲として語られる楽曲群が並ぶ。『Leaf House』は冒頭から印象を残しやすく、声の重なりと擬音の使い方がよくわかる。『Kids on Holiday』や『We Tigers』では、リズムの置き方と合唱的なフレーズが前に出る。『Sweet Road』や『Visiting Friends』は、タイトルどおりの移動感や距離感がそのまま音に反映されているように聞こえる。アルバム後半の『Whaddit I Done』や『Sung Tongs』でも、歌と音響の境目がはっきりせず、言葉がそのままリズムになる場面がある。

全体を通して、派手な展開で押すタイプではないが、曲ごとの手触りが明確だ。アコースティックな編成なのに、室内楽のように整っているわけでもない。その不揃いさがこのアルバムの特徴で、Animal Collectiveが後に広げていく音楽性の入口としても重要に思える。2004年という時点で、実験と歌の両方をここまで近づけた作品は、同時代のインディー・シーンの中でもかなり目立つ存在だったはずだ。

『Sung Tongs』は、Animal Collectiveの名前を広く印象づけた作品でありながら、あくまで手触りのある小さな音から組み立てられたアルバムでもある。大きなヒットで押し切るのではなく、声、ギター、反復、ささやかな効果音で構成を作る。その方法が、このバンドの次の段階を見せる入り口になっている。

トラックリスト

  1. A1 Leaf House 2:43
  2. A2 Who Could Win A Rabbit 2:19
  3. A3 The Softest Voice 6:46
  4. B1 Winters Love 4:55
  5. B2 Kids On Holiday 5:47
  6. B3 Sweet Road 1:16
  7. C1 Visiting Friends 12:37
  8. D1 College 0:53
  9. D2 We Tigers 2:43
  10. D3 Mouth Wooed Her 4:25
  11. D4 Good Lovin Outside 4:27
  12. D5 Whaddit I Done 4:06

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