The Avalanches - Since I Left You (2000)
The Avalanches 2000

The Avalanches - Since I Left You (2000)

Electronic Hip Hop Downtempo Abstract Leftfield House

The Avalanches『Since I Left You』レビュー

The Avalanchesの『Since I Left You』は、オーストラリア・メルボルン出身の電子音楽グループによるデビュー・スタジオ・アルバムで、2000年にオリジナル・リリースされた作品だ。サンプリングを中心に組み立てられたアルバムとして知られ、約3,500枚分のヴァイナルから素材を集めて構成されたことでもよく語られる。ジャンル表記はElectronic、Hip Hop、スタイルはLeftfield、House、Abstract、Downtempo。いわゆる「曲を並べたアルバム」というより、断片の集合がそのまま一つの流れになっていくタイプの作品で、The Avalanchesの出発点を示す一枚でもある。

制作背景と作品の位置づけ

制作は1999年に始まり、当初は「Pablo's Cruise」という作業タイトルが使われていた。中心になったのはDarren SeltmannとRobbie Chaterで、Yamaha Promix 01とAkai S2000のサンプラーを使い、レコードから拾った音を切り貼りして曲を作っていった。2人は別々に作業しながらテープを交換し、相手のアイデアを聴いてさらに展開させる方法を取っていたという。制作の密度はかなり高く、サンプルの権利処理の都合で発売は遅れ、オーストラリアでは2000年11月27日に出たものの、海外展開はその後になった。

このアルバムはThe Avalanchesにとって、まさに代表作であり出発点でもある。後年まで語られるのは、単にサンプル数が多いからではなく、断片の寄せ集めがアルバム全体の物語としてつながっている点だろう。レーベルはModular Recordings。オーストラリアのインディー・シーンを語るうえでも外せない存在で、この作品の初回盤もその流れの中にある。

サウンドの特徴

実際に聴くと、まず音の切り替えの速さが目につく。短いフレーズ、声の断片、リズム、メロディが次々につながり、1曲の中でも場面が何度も変わる。とはいえ散漫にはならず、全体としてはかなり整理されている印象が強い。サンプリング作品にありがちな「素材の展示」ではなく、最終的にはポップ・アルバムとしての流れが残るのがこの作品の特徴だろう。

代表曲としてはタイトル曲「Since I Left You」がまず挙がる。アルバムの顔として機能していて、シングルとしても知られる曲だ。軽快な反復の上に声や音の断片が積み重なり、聴き始めるとアルバム全体の設計が見えやすい。もう一つ大きいのが「Frontier Psychiatrist」で、こちらは後のリリースでは“re-recorded samples”版が使われている。奇妙な会話とリズムの組み合わせが印象に残る曲で、The Avalanchesの名前を広く知らしめた要素の一つだ。

初回盤ならではの違い

このオーストラリア初回盤には、後年の版と少し違う点がある。たとえば「Tonight May Have To Last Me All My Life」はスリーブ上では「Tonight」と短く表記されている一方、サイドCのラベルでは元の長いタイトルが残っている。さらに「Radio」のイントロは短くなっており、「Diners Only」の冒頭に入っていた映画由来のセリフや、「Little Journey」の途中にあったギター/ストリングスのサンプルも削られている。盤面やゲートフォールドの仕様も含め、初回盤としてのまとまりがある。

なお、この作品には全てのヴァイナル盤に共通する注意点もある。テストプレスを除き、「Since I Left You」と「Live At Dominoes」には「younger than springtime」のサンプルは入っていない。「Summer Crane」と「Extra Kings」にはWarの「H2Overture」のフルート・サンプルは入っておらず、「Radio」冒頭の「Johnny!」の台詞や、「Diners Only」冒頭の「good evening gentlemen」も入らない。こうした差分も、サンプル作品ならではの面白さだ。

同時代とのつながり

2000年前後の電子音楽やヒップホップの文脈で見ると、『Since I Left You』はかなり独特な位置にある。ブレイクビーツやサンプリングを使う作品は多かったが、ここまで断片を密に組み合わせて、しかもアルバム単位で一つの流れにした例は多くない。ヒップホップ、ハウス、ダウンテンポ、実験的な編集感覚が同居していて、Madvillain的なサンプル感覚や、コラージュ的なポップ感覚と並べて語られることもあるが、The Avalanchesの手つきはより祝祭感と移ろいの両方を強く持っている。

英Official Chartsでは全英8位、29週チャートイン。シングル「Since I Left You」も全英16位まで上昇している。オーストラリアでもARIAアルバムチャートで最高21位を記録し、その後売上を伸ばしたとされる。発売当時から評価が高く、いま聴いても編集の精度と構成力がはっきり伝わる作品だ。The Avalanchesのディスコグラフィーの中では、やはり最初にして最重要作として置かれる一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Since I Left You
  2. A2 Stay Another Season
  3. A3 Radio
  4. A4 Two Hearts In 3/4 Time
  5. B1 Avalanche Rock
  6. B2 Flight Tonight
  7. B3 Close To You
  8. B4 Diners Only
  9. B5 A Different Feeling
  10. C1 Electricity
  11. C2 Tonight
  12. C3 Pablo's Cruise
  13. C4 Frontier Psychiatrist
  14. D1 Etoh
  15. D2 Summer Crane
  16. D3 Little Journey
  17. D4 Live At Dominoes
  18. D5 Extra Kings

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