Billy Paul - When Love Is New (1975)
Billy Paul 1975

Billy Paul - When Love Is New (1975)

Funk / Soul Soul Disco

ビリー・ポール『When Love Is New』について

ビリー・ポールは、フィラデルフィアを代表するソウル・シンガーのひとりで、1972年の「Me and Mrs. Jones」で広く知られる存在だ。この『When Love Is New』は1975年作で、フィラデルフィア・インターナショナル・レコードから出たアルバムのひとつ。ソウルを軸にしながら、当時のフィラデルフィア・サウンドらしい洗練された演奏と、社会性のあるテーマ、そしてバラードの強さが同居した作品になっている。

フィラデルフィア・サウンドの中での位置づけ

この時期のフィラデルフィア・インターナショナルは、ケニー・ギャンブルとレオン・ハフの制作体制を中心に、濃密なストリングス、きっちり組まれたリズム、滑らかなホーンやコーラスを備えた作品を数多く送り出していた。ビリー・ポールもその流れの中にいて、本作ではその持ち味がかなりはっきり出ている。録音はフィラデルフィアのSigma Sound Studios、マスタリングはFrankford / Wayne Recording Labsで行われており、同レーベルの黄金期らしい制作環境がそのまま反映された一枚といえる。

また、本作はフィラデルフィア・インターナショナルのハウスバンドMFSBが伴奏を務めた最後のアルバムともされている。MFSBの演奏は、ただ伴奏に徹するだけでなく、曲の構造そのものを支える役割が大きい。本作でもその役割は明確で、歌を押し上げるというより、歌の周囲に厚い音の層を作るような印象がある。

社会的なA面、恋愛感情を軸にしたB面

このアルバムの特徴は、曲の並びにかなりはっきり出ている。A面には「People Power」「America (We Need The Light)」「Let The Dollar Circulate」など、社会的・政治的な主題を持つ楽曲が並ぶ。公民権運動以後のブラック・ミュージックが担っていたメッセージ性を、フィラデルフィア流の整ったプロダクションの中に置いた形で、同時代のソウル作品の中でも視点がはっきりしている。

一方でB面は「When Love Is New」「Malorie」「I Want Cha' Baby」「Let's Make A Baby」といった、よりロマンティックでスローな楽曲中心の構成。ここではビリー・ポールの声の柔らかさと、フレーズの置き方の細かさがよく出る。大げさに煽るのではなく、言葉を少し後ろに引きながら歌うような運びで、感情の温度を保ったまま進んでいく印象がある。

シングル曲とチャート成績

本作からは「Let's Make a Baby」と「People Power」がシングルとして出ており、前者はポップ・チャートで83位、ソウル・チャートで18位、UKチャートで30位を記録した。後者はソウル・チャート82位、USダンス・チャート14位。アルバム全体としてはビルボードのポップ・アルバム・チャート139位、ソウル・アルバム・チャート17位を記録している。1972年の大ヒット「Me and Mrs. Jones」と比べると数字は控えめだが、シングルの動きとアルバムの内容を見ると、商業的なヒット狙いだけでなく、より広いテーマを扱う作品として作られていることがわかる。

とくに「Let's Make a Baby」はタイトルの通り直接的な表現を持つ曲で、当時のソウル・シングルらしい親密さがある。対して「People Power」は、タイトルからもわかるように、個人的な恋愛だけではない方向へ視線を向けた楽曲で、本作の性格を象徴する一曲になっている。

制作陣と同時代の文脈

プロデュースはケニー・ギャンブルとレオン・ハフ、アレンジはボビー・マーティン、デクスター・ワンセル、ノーマン・ハリス、ジャック・フェイスが担当している。フィラデルフィア・インターナショナルの主要人物が集まった布陣で、いわゆる“シグマ・サウンド”の代表的な完成形のひとつとみなされることもある。1970年代半ばのソウルは、ディスコへと接続していく流れの中にあったが、この作品はその直前の段階で、ソウルの歌心とダンス感覚がまだ強く結びついている。

同時代のアーティストでいえば、オージェイズやザ・イントルーダーズ、パティ・ラベルらと同じレーベルの美学の中に置けるし、より広く見れば、ロバータ・フラックやルー・ロウルズのような、洗練された都会的ソウルとも響き合う部分がある。とはいえ、ビリー・ポールの低く落ち着いた声質と、言葉をはっきり届ける歌い方は独特で、このアルバムでもその個性が中心に据えられている。

まとめ

『When Love Is New』は、ビリー・ポールの代表作群の中では大ヒット盤として語られることは少ないかもしれないが、1975年のフィラデルフィア・ソウルを理解するうえでは重要な一枚だと思う。政治性の強い楽曲と、濃密なラブソングが同居し、MFSBを含む当時の制作陣がその輪郭をしっかり支えている。ビリー・ポールの歌が、単なるムード歌謡ではなく、社会の空気と個人の感情の両方を抱えた表現として機能していることが、この作品ではよく見えてくる。

トラックリスト

  1. A1 People Power 4:18
  2. A2 America (We Need The Light) 5:20
  3. A3 Let The Dollar Circulate 4:58
  4. A4 Malorie 3:46
  5. B1 When Love Is New 5:28
  6. B2 I Want 'Cha Baby 6:18
  7. B3 Let's Make A Baby 7:11

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Soul"

toast