Black Merda - Black Merda (1970)
Black Merda 1970

Black Merda - Black Merda (1970)

Funk / Soul Funk Psychedelic

Black Merda『Black Merda』(1970, Chess / US)

Black Merdaのセルフタイトル作は、1970年にChessから出た唯一のオリジナル・アルバムだ。デトロイト周辺で活動していたメンバーたちが、60年代後半のソウル・バンド経験を土台にしてロック・カルテットへと姿を変えた、その最初の結実でもある。Funk / Soulの棚に置かれることが多いが、実際の中身はもっと入り組んでいて、ファズの効いたギター、ブルースの骨格、サイケデリックな展開、ソウル由来のリズム感が同じ盤面に収まっている。

バンドの背景と作品の位置

Black Merdaは、Tyrone Hite、VC Veasey(Roosevelt Veasey表記もある)、Anthony Hawkins、Charles Hawkinsの4人編成。もともとはThe Soul AgentsやThe Impacts周辺で、Edwin StarrやThe Temptationsのバックを務めていた経歴を持つ。そこへJimi Hendrix『Are You Experienced』の衝撃が入り、Anthony Hawkinsの弟Charlesを加えてロック色を強めた、という流れで知られている。バンド名の由来も興味深く、当初の「Black Murder」という案を、黒人コミュニティが置かれた暴力的な現実を示す言葉として、Anthonyが「Black Merda」と綴り替えたものとされる。

このアルバムは、そうした背景がそのまま音に出ている。Hendrix直系のファズ・トーンを前面に出しながら、ソウルのグルーヴを残し、ところどころにアコースティック寄りのパッセージも差し込む構成。Detroitの同時代シーンでいえば、FunkadelicやThe Bar-Kaysの初期作と並べて語られることが多いが、Black Merdaのほうがよりブルース寄りで、ギターの鳴りがはっきりしている印象だ。

盤の仕様と初期プレスの特徴

今回のUS盤はChessのLPS 1551。ラベルには「Electronic Stereo」の表記が入る版で、ジャケットとラベルでカタログ番号の並びが異なる仕様になっている。Chessの1970年前後のリリースらしく、レーベルの体裁はやや過渡期的で、同社のブルース/R&B資産の延長線上に、こうした黒人ロック作品が置かれている感じがある。Chessはもともとブルースの名門として知られるレーベルだが、60年代末から70年代初頭にかけてはソウルやロックにも手を伸ばしていて、その文脈の中でこの作品が出たことがわかる。

サウンドの印象

実際に聴くと、まずギターの歪みが強い。単なるハードロック的な厚みではなく、音の端にざらつきが残っていて、リフが前へ出る場面でも空間が広く感じられる。リズム隊はソウル・バンド出身らしく、ビートの置き方が安定している一方で、曲によっては少し間を外したような粗さが残る。その粗さが、整いすぎない熱量として機能している。

また、曲の並びにはラジオ向けの単純な作り込みよりも、バンドがステージで鳴らしていた感覚をそのまま持ち込んだような気配がある。録音は1970年冬にシカゴで行われたとされ、当時のChess作品らしい乾いた質感もある。派手なヒット曲で押すタイプではなく、アルバム全体でグルーヴとギターの絡みを聴かせる作り。代表曲としてはタイトル曲「Black Merda」がまず挙がるが、作品全体が一続きの流れで記憶されやすい盤でもある。

同時代との関係

Black Merdaの重要性は、黒人ロックやヘヴィ・ファンクの初期形を早い段階で提示していた点にある。Jimi Hendrixの影響は明確だが、単なる模倣にはなっていない。ソウル・バンドとしての経験があるため、リズムの底にある推進力が強く、そこへサイケデリックなギターが乗る。後年のレア・グルーヴ、サイケ再評価の文脈で掘り返されたのも納得しやすい内容だ。

当時はChess側の販路や管理の問題もあって十分な評価を得にくく、長く入手しづらい時期が続いた。けれど、その後の再発で耳にする機会が増え、Black Merdaが初期の黒人ロック/ファンクの重要な地点にいることが広く知られるようになった。翌1971年には名義をMer-Daに縮めた『Long Burn the Fire』へ進むが、この1970年作は、その前段階としてもっとも輪郭がはっきりした作品だ。

Chessのカタログの中でも少し異色で、ブルース名門レーベルの看板だけでは収まらない内容。ギター中心のロック感、ソウル由来のリズム、サイケデリックな展開が同居した、Black Merdaの出発点として印象に残る一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Prophet 2:55
  2. A2 Think Of Me 2:35
  3. A3 Cynthy-Ruth 3:05
  4. A4 Over And Over 5:34
  5. A5 Ashamed 3:55
  6. B1 Reality 2:00
  7. B2 Windsong 4:17
  8. B3 Good Luck 3:48
  9. B4 That's The Way It Goes 3:14
  10. B5 I Don't Want To Die 3:58
  11. B6 Set Me Free 0:40

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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