Eduardo Araújo & Silvinha - Sou Filho Dêsse Chão (1976)
Eduardo Araujo 1976

Eduardo Araújo & Silvinha - Sou Filho Dêsse Chão (1976)

Rock Folk, World, & Country Funk / Soul Latin Psychedelic Rock Funk MPB

Eduardo Araújo & Silvinha『Sou Filho Dêsse Chão』について

1976年にブラジルでリリースされたEduardo Araújo & Silvinha名義の『Sou Filho Dêsse Chão』は、ブラジルのロック、MPB、ファンク/ソウルの要素をひとまとめにしながら、さらに土着的なリズム感を前面に押し出した作品として知られている。Eduardo Araújoは1942年7月23日生まれのブラジル人シンガーで、ロックとカントリーの両方にまたがるキャリアを持つ人物だが、このアルバムではそうした経歴がそのまま反映されている印象が強い。Silvinhaとの共作という形も含め、単なる歌手作品ではなく、当時のブラジル音楽の混交性を示す一枚になっている。

作品の輪郭

本作はブラジル盤としてBeverlyレーベルから発売された。Beverlyは1970年代のブラジルで活動していたレーベルで、この時期のローカルなポップスやロック作品を支えた存在のひとつとして見られている。『Sou Filho Dêsse Chão』はその中でも、ロックの骨格にソウル、ファンク、サイケデリックな音像、そしてカンドンブレやバイアォンといったブラジル固有のリズムが重なる作りで、ジャンルの並置ではなく、実際にひとつの流れとして鳴っている点が重要だ。

タイトル曲「Sou Filho Dêsse Chão」をはじめ、「Misturando Rock com Baião」「Capoeira」といった曲名からも、作品全体が“ブラジルの身体感覚”を中心に置いていることが伝わる。英米ロックの語法を借りるだけでなく、土地に根ざした要素を前に出しているところに、このアルバムの性格がはっきり出ている。

録音と参加ミュージシャン

制作はサンパウロのEstúdio do Temploで進められ、1976年10月末に録音が始まったとされている。演奏面では、Dominguinhosがサンフォーナで参加していることが知られており、これがアルバムの音の重心をロック一辺倒にしない要素になっている。Eduardo Araújoがバイーアを訪れ、カポエイラやカンドンブレに触れた経験を作品に反映させたという説明もあり、単なる装飾ではないかたちでブラジル北東部の感覚が持ち込まれている。

聴き進めると、ギターやリズム隊の押し出しの強さと、アコーディオンの入り方、民俗的なうねりが同居しているのがわかる。ロックの直線的な推進力と、ブラジル音楽特有の揺れがぶつかるというより、同じフレーズの中で共存している印象だ。ファンク寄りのグルーヴが出る場面でも、完全に都会的なソウルへ寄せず、どこか土の匂いが残る作りになっている。

同時代の文脈の中で

1970年代のブラジルでは、MPBの洗練とロックの導入が同時進行していたが、『Sou Filho Dêsse Chão』はその中でもかなり異色の部類に入る。Caetano VelosoやGilberto Gilのようにトロピカリア以後の混交感を引き継いだ系譜とも重なりつつ、より荒々しく、サイケデリックで、地方色の強い方向へ踏み込んでいる。後年は「ブラジルの重厚な土着ロック」として語られることが多く、コレクターや再評価の文脈で注目される作品になった。

同時代のブラジル・ロックやMPBの中でも、英米の流行をそのままなぞるのではなく、バイアォンや宗教的なリズム感を持ち込んだ点は際立っている。結果として、単に“珍しい作品”というより、ブラジル音楽の広い流れの中で、ロックがどこまで土地の音楽と接続できるかを示した例としても読める。

評価と位置づけ

同時代には好意的に受け止められていた記録があり、当時の有力盤のひとつとして挙げられていたことが確認できる。一方で、大きなヒット作として広く流通したタイプではなく、むしろ後年になって価値が上がった作品という見方がしっくりくる。Eduardo Araújoのキャリアの中でも、ロック、カントリー、MPB、土着リズムをひとつのアルバムにまとめた点で、かなり特徴のはっきりした位置にある。

『Sou Filho Dêsse Chão』は、派手な売れ方よりも、内容の密度で語られるべきアルバムだと思う。曲名の時点で方向性が明確で、演奏やアレンジもその線に沿って組み立てられている。ブラジル音楽の中でロックがどうローカル化されるか、その一つの具体例として見えてくる作品である。

トラックリスト

  1. A1 Sou Filho Desse Chão
  2. A2 Círculo Vicioso
  3. A3 Girassol
  4. A4 Capoeira
  5. A5 O Tempo Que Esse Tempo Tem
  6. B1 Manda Embora A Tristeza
  7. B2 Misturando Rock Com Baião
  8. B3 Ter O Que Eu Tenho Sem Você
  9. B4 Capoeira
  10. B5 Opanigê

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