David J - Crocodile Tears And The Velvet Cosh (1985)
David J 1985

David J - Crocodile Tears And The Velvet Cosh (1985)

Rock Acoustic

David J / Crocodile Tears And The Velvet Cosh(1985)

David Jのソロ第2作となるCrocodile Tears And The Velvet Coshは、1985年にUKのGlass Recordsから登場したアルバムだ。Bauhausのベーシストとして知られるDavid JことDavid John Haskinsが、バンドの強い輪郭から少し距離を取り、自分の曲作りを前に出した時期の作品である。Bauhausの硬質な低音を思い浮かべて聴くと、ここでは印象がかなり違う。アコースティック・ギターを軸にした曲が多く、演奏も編曲も、前作より整理されている。

ソロ作家としての輪郭が見える時期

このアルバムは、David JがBauhausの延長線上ではなく、別の書き手として形を整えていく途中に置かれている。AllMusicでも、前作 Etiquette of Violence よりも曲作り、録音、演奏のまとまりが増した作品として扱われている。実際、ここではゴシック・ロックの記号だけを追う感じは薄く、フォーク寄りの語り口や、ジャズに触れたような間合いが前に出る。Bauhaus時代の鋭さを残しながらも、音の置き方はかなり柔らかい。

1985年という時期も大きい。Bauhaus解散後、David Jは新しい活動の足場を探していた時期で、同時代のインディー周辺の空気と近い場所にいた。The Jazz Butcher周辺の感触が強いと評されるのもその流れに合っている。派手なロックの押し出しよりも、言葉の運びや曲の構造をじっくり聴かせるタイプの作品だ。

収録曲の手触りと音の作り

この盤には、プリントされたインナー・スリーブに歌詞とクレジットが収録されている。そうした作りも含めて、作品全体が「聴かせる」ことを意識した構成になっている。ジャケットやクレジットの情報からも、当時のインディー盤らしい実直さが伝わる。サックスのクレジットに“Unknown Busker”という表記があるのも、この作品の少しゆるい空気を示す要素だ。

タイトル曲「Crocodile Tears And The Velvet Cosh」はシングルとしても出ており、このアルバムの顔になっている。Music Weekでは高いインディー・チャート入りが限界になりそうだと評され、商業的な大ヒット作というより、評価先行の作品として受け止められていた。大きなチャート実績は確認しづらく、当時の露出は限定的だったようだ。

UKインディーの文脈の中で

レーベルはGlass Records。ロンドンの独立系レーベルで、1980年代のUKインディーを支えた存在のひとつだ。Nine MileとThe Cartelによる流通、フランス製造といった情報も、当時の独立制作盤らしい背景を物語る。メジャーの規格から少し外れた流通網の中で、こうした作品が静かに回っていた時代である。

後年の再評価では、1980年代中盤の過小評価された一枚として扱われることが多い。Bauhausの「ゴス」イメージだけでは拾いきれない、フォークやカントリー、サイケデリックな気配が注目されてきた。とはいえ、ここで重要なのはジャンルの混合そのものより、David Jが自分の声と曲の形を前面に出し始めている点だ。のちのLove and Rockets期につながる感触も、このアルバムの中にすでにある。

まとめ

Crocodile Tears And The Velvet Coshは、BauhausのベーシストとしてのDavid Jではなく、ソロの書き手としてのDavid Jを確認できる1985年作だ。アコースティック・ギターを中心に、演奏は抑制され、曲はよくまとまっている。派手さよりも、言葉と間合いで聴かせるアルバム。David Jのキャリアの中では、バンドの影から少し抜け出し、自分の作風を固めていく節目の一枚として置いておきたい。

トラックリスト

  1. A1 Crocodile Tears And The Velvet Cosh 5:01
  2. A2 Too Clever By Half 4:10
  3. A3 The First Incision 2:50
  4. A4 Imitation Pearls 1:39
  5. A5 Light And Shade 3:45
  6. A6 René 4:01
  7. B1 Stop This City 5:52
  8. B2 Justine 3:25
  9. B3 The Ballad Of Cain 2:37
  10. B4 The Vandal And The Saint 2:16
  11. B5 Boats 3:05
  12. B6 Slip The Rope 5:19
  13. B7 Greener 0:27

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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