Siglo Cero - Latinoamérica (1970)
Siglo Cero『Latinoamérica』について
Siglo Ceroの『Latinoamérica』は、1970年にコロンビアのボゴタで生まれた、バンド唯一の正式アルバムとして知られる作品だ。演奏の中心にあるのは、Humberto Monroy、Roberto Fiorilli、Jaime “Patrón” Rodríguezの3人で、当時のコロンビア・ロックの中でもかなり特異な位置を占める。ジャズ、ロック、ラテンの要素を土台にしながら、長めの展開や即興性を含んだ作りで、後年はジャズ・ロック、サイケデリック、プログレッシブの文脈で語られることが多い。
このアルバムは、単なる同時代のロック作品というより、1970年前後の南米で起きていた実験的な音楽の動きをそのまま閉じ込めたような記録として見られている。コロンビアのロック史では例外的な存在で、当時としてはかなり踏み込んだ内容だった。のちの紹介では、Bitches Brew期のMiles Davis、初期Santana、Cream、Buddy Miles、Rare Earthといった名前が並べられているが、実際にそうした時代の空気と近い緊張感を持っている。
作品の成り立ちとバンドの位置づけ
Siglo Ceroは、1969年にボゴタで結成されたコロンビアのプログレッシブ・ロック・バンドで、『Latinoamérica』は彼らの唯一のLPだ。バンドの前史にはThe Speakers系の流れがあり、Humberto MonroyやRoberto Fiorilliを軸に、より実験的な方向へ進んでいったことがうかがえる。アルバムの制作背景としては、Festival de la Vidaでの演奏を記録する計画があったとされ、最終的にはスタジオでライヴ録音風にまとめられたという話が残っている。
このあたりの経緯も含めて、作品全体には「完成されたスタジオ作品」というより、現場の熱を優先した記録物のような性格がある。曲のつなぎ方や演奏の流れにも、その場で音を積み上げていく感触が強い。ロックの枠だけでなく、当時のジャズの即興性や、ラテン的なリズム感も入り込んでいて、単純なジャンル分けでは収まりにくい。
聴きどころ
『Latinoamérica』で目立つのは、ギター、オルガン、リズム隊の絡み方だ。派手な歌メロで押すタイプではなく、曲が進むにつれて演奏が少しずつ熱を帯びていく作りになっている。インストゥルメンタル寄りの展開も印象に残りやすく、ひとつのリフを起点にして、ジャズ的なフレーズやサイケデリックなうねりへ移っていく。
実際に聴くと、まず録音の生々しさが耳に残る。音の輪郭は鋭すぎず、演奏の距離感が近い。70年代初頭の南米ロック特有の、少し荒いまま突き進む感じがある。整いすぎた後年のプログレとは違って、展開の説得力は演奏の熱量で支えられている。そこがこの作品の核になっている。
1970年のコロンビア・ロックという文脈
1970年のコロンビアで、こうした長尺で実験性の高いロック作品が出ていたこと自体が重要だ。商業的な大ヒットとして語られる盤ではなく、むしろ国内ロック史の重要作、希少盤、唯一の記録として評価されてきた。後年の再発や紹介が続いているのも、その価値が時間をかけて見直されてきたからだ。
同時代の英米ロックと比べると、制作規模や録音環境はかなり違うはずだが、演奏の志向は決して小さくない。むしろ、南米という土地で当時どこまで音を押し広げられるか、その試行錯誤がそのまま出ている。そうした意味で、『Latinoamérica』はコロンビアのアンダーグラウンドなロック/反文化の熱気を刻んだ一枚として残っている。
2018年盤について
2018年にPortugalのGolden Pavilion Recordsから出た再発盤は、ゲートフォールド仕様のブラック・ヴィニール盤で500枚限定。別にグリーン&ブルーのマーブル・ヴィニール盤も100枚限定で用意されている。オリジナルの1970年盤を土台にした再評価の流れの中で、こうした再発が組まれた形だ。
この再発によって、当時のコロンビアで生まれた異色のロック作品が、より広い文脈で聴かれるようになった。『Latinoamérica』は、派手な代表曲で知られるタイプのアルバムではないが、バンドの唯一作として、そして1970年の南米ロックの記録として、十分に強い輪郭を持っている。
トラックリスト
- A Viaje 1 16:00
- B Viaje 2 16:00